何だかこの男は自分に会う時はいつもテンションが高い気がする。
それともそれは俺の気のせいか?
仏頂面で内心には疑惑の嵐。そんなエドワードに向かってニッコリと彼は笑った。
目の前には敵が一人。

「ほらほらオチビさん、おやつの時間だよー」

なんだかやけに嬉しそうな、エンヴィーが一匹。





骨まで愛して





一人・一匹・一頭・一羽・一個・一本・一冊・一枚・一億・・・これは違う。
脳内でセルフツッコミをしながら、エドワードは読んでいた本を降ろした。
もちろん途中だったページにはしおりを挟んで。
机の上に山積みにしていた本は、いつのまにか床へと降ろされている。
その代わりに乗っているのはケーキと紅茶。
楽しそうに紅茶を蒸らしているエンヴィーにエドワードは大きく肩を落とす。
コイツといい某大佐といい、自分はそんなに食べ物に釣られるように思われているのか、などと考えながら。
「オチビさん、チョコとイチゴどっちがいい?」
「・・・・・・・・・何でここにいるんだ、なんてツッコミくらいさせろよな・・・」
「別にいつものことじゃん?」
あぁ本当にいつものことだ、とエドワードはこめかみを引きつらせながらやけっぱちに笑う。

そう、なんでか敵であるはずのエンヴィーと茶をするのは、『いつものこと』なのだ。
・・・・・・・・・たとえエドワードが何度心の中でツッコミを入れたとしても。



「オチビさん、あーん」
口元へと運ばれたショートケーキに、エドワードは露骨に嫌な顔をする。
それにしてもエンヴィーはこの場に現れてからずっと笑顔のままだ。
「食べないと殺っちゃうよ?」
「やれるものならやってみろよ」
「食べないとヤっちゃうよ?」
「・・・・・・・・・」
文字面は同じなのに意味が確実に違う言葉にエドワードは大人しく口を開けた。
差し入れられた甘いスポンジをもぐもぐと咀嚼する。
彼は決めているのだ。
殺されるならまだしも、犯されるくらいなら多少のことはやってやる―――と。



とりあえずお茶を一緒に飲んで、エドワードは置いてあった読みかけの本を再び開いてソファーに寝転がった。
ポスンとクッションに頭を乗せて、天井に腕を伸ばして本をめくる。
視界の隅っこには90度回転して見える敵の笑顔。
「・・・・・・なんでオマエ、俺んとこに来るんだよ」
「それはオチビさんを気に入ってるから」
「俺とオマエは敵だろ?」
「まぁね。でも俺はオチビさんが好き。オチビさんが用なしになったら残りの部分は貰うって約束してるんだ」
「・・・・・・・・・」
「たぶん身体は残るんじゃない?少なくとも目だけは残してほしいよね。その金色、大好きだし」
ニコニコと笑いながら物騒なことを言う。
けれどそんなことにももう慣れた。それだけ一緒にいる時間が多いということか。



どうやら自分はエンヴィーをはじめとする幾人かに生かされているらしい。
ムカツク話だ、とエドワードは思う。
何だって自分がこんな怪しさ極まりない奴らに生かされなくてはならないのだ。
しかも生かしておいて最後には人柱として使うだと?
でもって残りの部分は、今目の前にいるエンヴィーに引き取られる。
「・・・・・・・・・最悪だ」
うんざりとした表情を浮かべるエドワードにエンヴィーは笑った。



「大丈夫。骨までちゃんと愛してあげるから」
満面笑顔のエンヴィーに、エドワードはもう一度「最悪」と呟くのだった。





2003年11月10日