A guardian of Liberty and Solitude
Last.最後の舞台の幕を開けよう





思えば確かに素地はあったのだ。おそらく、互いに。幼心にも過ごした日々は鮮やかだったし、交わした友情は本物だったと記憶している。しかし思い出すまでに時間がかかったのは、それだけあの日々が過去と成り果ててしまっていたからだ。時折ふと回想しては、今頃どうしているのか、そう考えるくらいの存在になっていた。
七年前、ブリタニアと日本は戦争を開始した。ナイトメアフレームを投入したブリタニアの勝利はすぐに決まり、日本はエリア11と名を変えて植民地のひとつとなった。当時日本に留学していたルルーシュとナナリーは、戦端が開かれる直前に本国へと強制的に送還された。その際に手を振って別れた。また会おうと誓って。その頃は国家による争いなんて、自分たちには当てはまらないと思っていたのだ。
あれから敗戦と屈辱を経て、彼は一体どんな風に変わったのだろう。それは劇的だっただろうか。おそらく衝撃ではあったのだろう。少なくともゼロとしてクロヴィスを殺害するに到るほどには、彼にとって大きな意味を持つ出来事だったのだ。おそらくそれは、母親を殺された自分と同じ。己のすべてが他によって覆される、個を無視する破滅的な恥辱。
しかしルルーシュは自らの足で立ち上がった。同じようにエリア11で、彼も密やかに息を潜めながらも立ち上がる機会を待っていたのだろう。その機会が今となっただけのこと。だけどやり方が不味かった。正義の味方を自称してしまったからには、正義以外の行いは許されない。だからこそブリタニア皇帝でもシュナイゼルでもなく、ルルーシュがこの地へとやってきた。与えて奪い、踏み躙って慈しむ、そんな統治はルルーシュにしか出来やしない。チェスのように積んでいく才能を相手にするには、彼はあまりに直情過ぎた。思えば、簡単な性質をしていた。世界が狭かったし、考える前に動く子供だった。暴力を厭わなかった。だからこそのゼロなのだろう。
会いたいと思ったのは感傷ではない。確かに親愛はあれど、そんなものに流されてはブリタニアで生きてこれなかった。ただ顔が見たいと思ったのは純粋なる友人としての感慨であり、ゼロという薄氷のテロリストに対する餞別を含んだ興味でもあった。綺麗なリボンと包装紙でラッピングしたプレゼントの中身は、友情とそして絶望。それを突きつけたときの彼の顔が見たかったと言ったら、性格が悪いと罵られること間違いない。しかし七年を経て変わったのは、彼だけでなく自分もなのだ。境遇、心根、そして立場の激動。そこに是非はない。だからこそルルーシュは教壇に立ち、にこりと微笑んで己を名乗った。
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアです。総督の執務の傍らになりますが、本日よりこの学園に通わせていただきます。どうぞよろしく」
広がるざわめき。同世代の少年少女たちばかりの中で、ただ一人だけ大きく目を見開いて顔を強張らせた相手に、ルルーシュは殊更に美しく微笑んでみせた。零れそうな翡翠の瞳に、懐かしさが込み上げてくる。教師の言葉を遮って彼に歩み寄り、喜色に頬を染め上げてみせた。再会できて嬉しいよ。その気持ちに嘘はない。
「久しぶりだな、スザク」
微笑んでルルーシュは、旧友に語りかけた。会いたかったよ、ゼロ。





全9話完結。お付き合いくださりありがとうございました!
2008年6月11日