A guardian of Liberty and Solitude
5.世界が君に恋をする
『お兄様、お元気ですか? 体調など崩されていませんか?』
「俺は元気だよ、ナナリー。心配しなくていい」
『ルルーシュはいつもそう。私とナナリーにくらい心配させてくれてもいいじゃない』
「これは手厳しいな、ユフィ」
画面の向こうで並んでいるのは、ルルーシュの実妹であるナナリーと義妹であるユーフェミアだ。二人とも学校から帰ってきたばかりらしく、制服を身にまとっている。半月ほど前まではルルーシュも同じものを着ていたが、今や総督としての礼装が基本だ。黒を基調として白と赤を添える。時折ゴールドや紫を差し入れることもあり、それらはクロヴィスがルルーシュに似合う色として勧めていたものばかりだった。懐かしい義兄は、今や写真の中でしか笑みを見せてくれない。
「本当に心配しなくていいさ。少なくとも今のところ統治は順調だから」
『コーネリアお姉様から聞いたわ。ルルーシュはイレブンの技術者を雇うブリタニア企業に補助を出してるって』
「イレブンにも優秀な者がいる。彼らの力を発揮する機会を与えてやることが、今後の意識改革に繋がるからな」
『エリア11は今までに類を見ないエリアになるだろうって、皇室でももっぱらの噂ですよ』
「純粋なる実力が勝負の世界さ。力でもなく、恐怖でもない。己が己の正義を、己のために全うできる。そんなエリアに、俺はしたい」
ユーフェミアとナナリーが嬉しそうに顔を綻ばせた。二人はまだ学生という身分であり、皇女ということもあって執政に参加はしていない。しかしこのままいけば、ゆくゆくはエリア総督などの要職に就くことになるだろう。その際の指針のひとつとして、ルルーシュは己の作り上げるエリア11を彼女らに見せておきたかった。エリアはブリタニア皇帝の名の下にあるが、そこを染め上げるのは総督の役目。望まれてしまえば、後は勝手についてくる。必要なのだと、そう言わせてしまえばいいのだ。
『シュナイゼルお兄様も褒めていらっしゃいましたよ。お兄様は凄いって』
「最後に希望を残す兄上とは違うやり方だからな」
『お姉様も「ルルーシュは政治家に向いてるな」って言ってたわ』
「どうせその後に『軍人には向かないけれどな』とか言ってたんだろう」
己の運動神経を揶揄したルルーシュに、ナナリーとユーフェミアは額を並べるようにして楽しげに笑う。そんな妹たちの姿に、ルルーシュも肩を揺らして組んでいた足を解いた。エリア11は順調だ。少しずつ少しずつ、器を入れ替え始めている。分かるだろうか、実力主義という、この世界の厳しさが。己の責任は己しか取ることが出来ないのだという、個人に満ちた世界の義務が。その中に輪を作り出すことが、総督であるルルーシュの仕事だ。人ひとりずつを保護し、そして民衆全体を管理する。己が己を誇れるように生きれれば、もう他に頼る必要はなくなる。
「さて、救世主様はどう出るかな?」
沈黙を守り続けているゼロ。徐々に台頭してきた、ブリタニア社会におけるイレブンの労働者。崇めてくれる信徒を失う気分は一体どんなものだろう。嘲笑を仮面に向けて、ルルーシュは妹たちへ愛を込めた微笑を送った。
人々よ、生きるがいい。誰のためでもない己のために。
2008年6月7日