A guardian of Liberty and Solitude
2.英雄の主導権
クロヴィスの葬儀は大々的に行われることとなった。しかしそれより先にブリタニア宮殿に集められた100人を超える子供たちを見回し、皇帝は玉座に座り続ける。ひとり前に出てきている子供は、ブリタニア皇帝の十一番目の息子であり、十七位皇位継承権を持つルルーシュだった。派手ではない、けれど趣味の良い盛装に身を包み、漆黒の髪が美を際立たせ、紫の瞳が知を露わにしている。片膝をついて礼を取り、ルルーシュはもう一度己の父親に進言した。
「父上、どうかこの私をエリア11の総督に任じくださいませ」
「理由を述べてみよ、ルルーシュ」
「クロヴィス兄上を葬ったゼロ、あれをこの手で捕らえたいのです」
ざわりと場が揺れ、さざめきが起こる。ルルーシュは凪いだ海のように静かに目を伏せ、さも当然のことのように目的を語った。ゼロ。クロヴィスを殺害し、エリア11に降り立ったイレブンの救世主。ブリタニアからしてみればテロリストでしかないその男を、捕らえたいとルルーシュは述べた。ブリタニア皇帝の眉が軽く跳ねる。
「ゼロを捕らえるか」
「はい」
「どうするつもりだ?」
「どうもこうも、ゼロはクロヴィス兄上を殺したと自ら語っております。ブリタニアの法に鑑みれば、殺人は違法行為。拘束することに何の問題がありましょうか」
「あくまで一犯罪者として扱うつもりか」
「拘束した後は、もちろん取調べをし、ゼロの供述を聞き、裏付けを取り、彼が無罪ならばもちろん解放し、そして有罪ならば裁判を開いて罰を求刑するだけです」
「テロリストを先導し、ブリタニアに牙を剥いた罪はどうする?」
「可笑しなことを仰いますね。ゼロは武器を持たない者の味方と言っただけで、ブリタニアの敵と宣言したわけではありません。あれは、ただの正義の味方。正義の味方は悪がいなければアイデンティティーを失うだけです」
支配者であるブリタニア皇帝を前に、ルルーシュは不遜とも取れる言葉を続ける。
「要は、ゼロを救世主から只人へと引き摺り下ろしてしまえばいいのです。そのための適任者は、父上でもシュナイゼル兄上でもなく、この俺でしょう」
父上は力がすべてですし、シュナイゼル兄上は親切すぎますから。その言葉にブリタニア皇帝は愉快そうに唇を吊り上げ、皇子皇女の中でも上座にいるシュナイゼルは困ったように眦を下げる。ルルーシュは瞳を細めて喉を震わせ、彼自身の主張を述べた。
「民は殺さずに活かし、生かさずに殺すもの。ですから父上、いま少し、エリア11をこのルルーシュにお預けください。可愛らしく従順で、ブリタニア人にもナンバーズにも優しい、模範的な土地にしてお返しいたしますから」
「よかろう。ジノとアーニャを連れて行くがいい」
「ありがとうございます。すべては父上とブリタニア、そしてクロヴィス兄上のために」
深々と一礼し、ルルーシュは立ち上がる。まっすぐに伸ばされた背筋はきらめいて美しく、その眼差しの強さは母親であるマリアンヌを思わせた。ナイトメアフレームを駆り、己の手を血に染め続けた母親と、あまたの謀略を駆使し、大地を血に浸し続ける息子と。あまりにも似通った母子に、ブリタニア皇帝は心底楽しげに声を上げて笑った。行ってくるがいい、我が子よ。その言葉を受けて騎士を二人連れ、ルルーシュはブリタニア本土を発った。
エリア11に、黒の総督が舞い降りる。
奪ってやるよ、おまえのすべてを。
2008年6月7日