A guardian of Liberty and Solitude
1.訃報に添える出逢い
「クロヴィス兄上が、死んだ?」
使者のもたらした悲痛な知らせに、ルルーシュは音を立てて椅子から立ち上がり、ナナリーは息を呑んで身を震わせた。小さな楽園、アリエスの離宮が哀しみに染まる。
優しい人だった。第三皇子なのに皇族らしくなく、そして皇族らしく。政治の才はあまりなかったけれども、補って余りあるホストであり、相手を楽しませる技に長けた人であった。きらびやかなものが好きだった。盛装にドレス、アクセサリーに宝石、ダンスのステップを踏むのはもちろん、自ら楽器を手にし伴奏することさえあった。己の力量を悟り、分を弁え、傀儡となることを良しとする人だった。それでも優しさに溢れていた。当然ながら向けられる相手は限られていたけれども、心根はとても甘い人だった。そんなクロヴィス・ラ・ブリタニアが死んだ。殺された。ブリタニア本国から遠い、エリア11という名の植民地で。
「・・・・・・ゼロ」
テレビ画面に映る仮面の男に、クロヴィスは殺された。ルルーシュの義兄、ナナリーの義兄。ユーフェミアの義兄、コーネリアの義弟、シュナイゼルの義弟。シャルル・ジ・ブリタニアの三番目の息子。殺されたクロヴィス・ラ・ブリタニア。
語られる主張に、ルルーシュは眉根を顰めた。秀麗な顔が悲しみから困惑に変わり、そして不可解を経て嘲笑へ到る。ナナリーは手のひらで顔を覆い、義兄の死に涙し続けている。その肩を柔らかく抱き寄せ、ルルーシュはテレビに視線を注ぎ続けた。武器を持たない者すべての味方。無抵抗のイレブンを残虐したクロヴィスに制裁を加えた。戦いを否定しないが、強い者が弱い者を一方的に屠ることを許さない。世界を裁く、それがゼロ。
「力を力で否定するのか。なんて無意味な」
クロヴィス兄上、囁いてルルーシュは妹を抱き締めた。兄の胸に顔を埋めて泣きじゃくるナナリーを、強く優しく抱きとめる。瞼の裏に浮かんでは消える、朗らかに笑うクロヴィスの姿。チェスは結局、ルルーシュの勝ち越しに終わってしまった。
あなたの仇は俺が取ります。誓いは離宮の中にそっと響いた。
正直に言えば、興味を覚えたのも事実だ。ゼロという漆黒のテロリストに。
2008年6月7日