close, on a world
10.gun in hands, smile and laugh





日本とブリタニアの戦争は、半年も経たずに決着が着いた。おおよその予想を裏切ることなく日本はナンバーズとなり、エリア11と名乗ることを義務付けられる。貴重な資源であるサクラダイトもブリタニアのものになり、帝国の軍事力は格段に飛躍することとなった。この戦争で投入されたナイトメアフレームは、その威力を世界中に知らしめた。ブリタニアはまた一つ、地図上から国家を消した。
ルルーシュと直人は、再び新宿に戻ってきていた。シンジュクと名を変えられ、イレブンとなった貧しい日本人が居住しているゲットーに小さなアパートを借りている。エリア11の総督はブリタニアから派遣されてきた第三皇子クロヴィス・ラ・ブリタニアで、彼はナナリーから報告を受けているのか、ルルーシュを探すために幾度となく私兵を秘密裏に日本全土に派遣していた。しかし、ルルーシュの存在は彼らに見つかることがなかった。それはNACという存在が先回りして手を打っていたからである。
ルルーシュはブリタニア皇子でありながらも祖国を離れたということで、NACの賓客として迎えられていた。ブリタニアに従順な振りをしながらも、裏では復権のためにテロリストたちを支援しているイレブンの統治機関。最後の日本首相である枢木玄武をトップに据え、政財界の重鎮だった人物たちを配置し、彼らは密やかに日本を取り戻すべく動いていた。ルルーシュはそのNACに、衣食住と身の安全の保障を引き換えに情報提供を行っていた。
直人は若輩ながらも度胸の良さと明晰な思考回路、そしてナイトメアフレームを操縦して戦場を経験したことを評価され、シンジュクゲットーでひとつのテロリスト集団を任されていた。紅月グループと呼ばれるそこには、かつての友人である扇や井上たちが所属している。
エリア11には続々と本国からブリタニア人が押しかけてきている。モノレールを挟んで向こうとこちら。整然とした街並みと崩壊した街並み。貧富の差は歴然とし始めていた。



「お?」
ミーティングを終え、それぞれに思い思い気軽い会話をしていたところ、ポケットの携帯電話が震えて直人は取り出した。液晶の浮かんだ名前に目を瞬き、テーブルの向かいでコーヒーを飲んでいるルルーシュに画面を向ける。
「ルル、花蓮からだ」
「花蓮? もう学校は終わったのか?」
「そうみたいだな。お嬢様の猫を被ってるのが面倒くさいってさ」
あいつは根っからのお転婆だからな、と直人は妹のアクティブさを思い出して笑っている。ルルーシュは肯定はしないけれども、否定もしない。自分よりも花蓮の方がずっと運動神経に優れていることを認めているからだ。
「今度はいつ会えるのかってさ」
「来週はずっとキョウトだから、会えるとしたらその次の週かな」
「怒るぞー、あいつ。毎週必ず会うって約束したんだろ?」
「・・・・・・会う度に怒られてる。清美さんがいなかったら絶対に殴られてる」
「そりゃそうだ」
日本がエリア11となったことを受け、花蓮は本来の父親であるシュタットフェルト家当主の養子になった。花蓮自身も己の風貌が日本人よりもルルーシュに近しいことから気づいていたのだろう。家族と離れるなんて嫌だと必死に喚いていたけれども、清美がメイドとして雇われることで逆に怒り、そしてそこまでしての望みだということで不承不承納得して養子になった。清美は花蓮に少しでも良い生活をしてもらいたかったのだろう。父親も日本人である直人にそれは難しかったし、直人自身テロリストになる道を選んだ。だからこそ花蓮だけは、と家族で話し合い、今現在花蓮は、紅月花蓮ではなくカレン・シュタットフェルトとして設立されたばかりのアッシュフォード学園に通っている。猫を被って病弱なお嬢様を演じていると聞いたときは、直人もルルーシュも笑ってしまった。
花蓮は自身もテロリスト活動に参加したいと言ったが、それは直人が決して許さなかった。おまえには俺と違うものを見て、違う人生を生きてもらいたい。そう言った直人の気持ちが分かるから、この件に関してはルルーシュも彼の味方だ。じゃあ代わりに頻繁に連絡をちょうだい、という花蓮の主張まではさすがに却下できず、今では毎日メールのやり取りをしている。
「花蓮はもう学校から帰るのか?」
「そうみたいだな。じゃあ、ちょっくら顔見せに行ってくるとするか」
お嬢様の機嫌を取りに、と直人はバイクのヘルメットを二つ持って立ち上がる。
「要、ちょっと出てくる。一時間くらいで戻るから」
扇たちに断りを入れて、アジトを出てバイクにまたがる。その背にしがみつく前に、ルルーシュは花蓮に一通のメールを入れた。交差点かどこかで一緒になれればいいけれど、そうでなければ擦れ違いの一瞬だろう。今から出る、とだけ本文に入力した。きっと花蓮は帰宅途中、送迎の車の中からじっと外ばかりを見ているだろう。手を振ってあげられればいい。そんなことを考える。
現状は危険が多いはずなのに、どこか幸せだとルルーシュは感じていた。





だけど分かっている。戦争はまだ終わっていない。
2007年11月8日