close, on a world
8.People whom I had loved died.





翌日、G-1ベースの現在地を確認して、ルルーシュと直人は家を出た。花蓮と母には先に長野に疎開しているよう伝え、後の合流場所を決めておく。心配そうな母に直人は必ず連絡することを約束した。花蓮はルルーシュの手を握り締めて「自信を持ちなさいよ!」と言い含めていた。ありがとう、とルルーシュも笑い、いってきます、と二人は新宿を立った。
展開はルルーシュの計画したとおりに進んでいった。ナイトメアフレームの投入された戦争は、まるで子供と大人の戦いのようだった。日本軍の攻撃はほとんどが無に等しく、戦車すら次々に破壊されていく。それでもルルーシュには次にどんな作戦が敷かれるのか、どこに何機のナイトメアフレームが配置されるのか、それに対して日本軍がどう対抗するのか、すべての構図が見えていた。見回りに出ていた一騎をブリタニア皇子を名乗ることで止めさせて、降りてきたパイロットを直人が昏倒させる。乗り込んだコクピットに並ぶ機器の数に、直人は呆れたように溜息を吐き出した。
「ボタン、多すぎないか? どれが何なのかさっぱり分からねぇよ」
「基本操作は簡単だ。照準は僕が合わせるから、直人は両腕両足を動かしてくれるだけでいい」
「マリアンヌ皇妃ってのは、ナイトメアフレームの乗り方までおまえに教えたのか?」
「一応教わったけれど、僕にはさして才能がなかったから、プログラミングやメカニックの方を重点的に習った。母上は『閃光のマリアンヌ』と呼ばれるほどのパイロットだったけれど」
「その才能は妹の方に引き継がれた、と」
「ああ」
持参したドライバーでカバーを外し、ノートパソコンを繋いでルルーシュはキーボードを打ち始める。その間も口ではコクピット内の機器の使用法について説明していた。十二歳とは思えない行動や才能を見る度に、直人は感心せずにはいられない。そして、納得してもいた。これだけの能力を有するルルーシュならば、父親であるブリタニア皇帝も、母親であるマリアンヌ皇妃も、各々の欲望のために利用したくなるだろう。だが、それを自制するのが人であり、子を慈しむのが親であると直人は思っていた。
「・・・・・・よし。これでこの機体の動きは本隊に察知されない。直人、操縦の方はどうだ?」
「とりあえず歩くことと銃を撃つことは出来るな」
「十分だ。次の作戦は夜を待って行われるだろうから、それまでは待機になる」
「母さんが持たしてくれたおにぎりでも食うか」
ナイトメアフレームを動かして木々の中に隠し、背負ってきたリュックサックから包まれたおにぎりを取り出す。ペットボトルにも家で常備している麦茶を詰めてきた。二人そろって「いただきます」と手を合わせてから食べ始める。この習慣は、ルルーシュが紅月家に来てから習ったものだ。ブリタニアでは挨拶することも、祈りを捧ぐこともなかった。その意味が今なら分かる。
「ルルーシュ、少し寝とけ。何かあればちゃんと起こすから」
広いとはお世辞にも言えないコクピットだが、年齢よりも細いルルーシュは簡単に直人の膝の上に載せられた。強い力でわしわしと頭を撫でられて首を竦める。誰かの体温が傍にあるということにも、もう慣れた。今はまだ、かつての日々を思い出して悲しくなってしまうけれど。
まもなく迎える決別を前に、ルルーシュはそっと目を閉じる。





ブリタニアに、神はいない。
2007年11月4日