close, on a world
3.Soft voice, graceful manner, kind words, so can't see.





花蓮にとって直人は自慢の兄だった。母の手料理は美味しいし、父親がいなくて寂しいと思ったことはあるけれども、十分に幸せだ。特に今はルルーシュという弟も出来て、毎日が楽しい。学校のテストで100点を取ると母が褒めてくれるし、優しく頭を撫でてくれる手が好きだった。
「ルルーシュのお母さんは、どんな人?」
ある日、夕食を食べ終わってテレビを見ているときに聞いてみた。最初の日に心配したのが不用だったように、ルルーシュは好き嫌いをせずに出されたものはすべて食べた。ただ知らないメニューが多いらしく、それはブリタニアと日本の違いなんだろうと花蓮は漠然と思っていた。箸を握る手も最初は不器用だったけれども、今はすでに完璧に使える。豆を一粒摘んで口に運んだのを花蓮はしっかりと見ていた。
「・・・・・・何だ、突然」
直人の教科書をぱらぱらとめくっていたルルーシュは、訝しげに顔を上げる。髪はまだ伸ばしたままで、女である花蓮よりも長い。
「だってあたし、ルルーシュのこと全然知らないもん。もう半年近く一緒に暮らしてるのに」
「・・・・・・知らなくてもいいだろう、別に」
「よくない! ねぇ、ルルーシュはブリタニア人なんでしょ? ブリタニアってどんなとこ? きれい? 面白い?」
「花蓮」
母親が名を呼んだけれども、花蓮は座布団の上から身を乗り出して、ルルーシュの手にしていた教科書を奪った。化学の本は何を書いてあるのかさっぱりで、こんなものを読むルルーシュはどうかしていると、そんなことを思う。
「ねぇ、ブリタニアってどんなとこ?」
ルルーシュは僅かに沈黙して、小さく息を吐き出した。
「・・・・・・ブリタニアは、最低の国だ。力が絶対的な威力を持ち、人の幸福はそれによって決まる。弱者は生きる価値がないと見なされる、そんな国だ」
「何それ。どういうこと? だってブリタニアって大きいんでしょ?」
「・・・・・・巨大で強大だが、それは幸福とイコールじゃない」
「もっと簡単に言ってよ! ルルーシュはブリタニアは好き? 嫌い?」
「・・・・・・そんな簡単な言葉で片付けられたら、どんなに良いものか」
清美が少しだけ顔を伏せたのに、花蓮は気づかなかった。ルルーシュは相変わらず難しい言葉を多く使う。ひとつひとつの意味は分かるけれども、それが文章として並べられると花蓮にはお手上げだった。花蓮はもっと物事を簡単に考える。好きと嫌い。許せるもの、許せないもの。世界はとても白黒だ。
「じゃあ質問を変える。ルルーシュのお母さんってどんな人?」
「・・・・・・美しい人だった」
「やっぱり!? ルルーシュに似てたらきっと美人よね!」
「・・・・・・ああ。美しく、聡明で、芯が強く」
微笑んで、ルルーシュは話す。
「子供を、子供とも思わない人だった」





己に触れた手を思い出すと、恐ろしくて眠れないくらいに。
2007年10月15日