授業中に愛を送信





「こら、授業中に何をやっているんだ?」
教師に注意されたのは、珍しくルルーシュだった。アッシュフォード学園の教師陣はブリタニア帝国の皇子であるルルーシュにも普通に指導をするし注意もする。しかしリヴァルと違って丸めた教科書で叩かれないのは、やはりルルーシュが皇子という身分にあるからだろう。きょとんと顔を上げた彼はクラスの注目を集めていることに気づき、教師に向かって素直に謝罪の言葉を述べた。
「申し訳ありません。今朝ポストを見たら妹からの手紙が届いてたので、ついそれを」
「妹? ユーフェミア皇女殿下か?」
「いえ、義妹ではなく実妹のナナリーです」
あ、とニーナが小さな声を上げた。ルルーシュが振り向くと、彼女は頬に朱を散らせる。
「ナナリー様って・・・・・・第六皇女の?」
「まだ公的な場面には出ていないのに良く知ってるな」
「この前、テニスのジュニア大会で準優勝されたのを、テレビで見て。ルルーシュ君に似て・・・・・・その、可愛い妹さんだよね」
「ああ。自慢なんだ」
ふんわりと笑うルルーシュに、ニーナは更に顔を赤く染める。意地悪くカレンが振り向いた。
「運動が得意なのね、ルルーシュ君と違って」
「どうせ俺は平々凡々さ。ナナリーは母上に似たんだ。母上も運動神経は抜群だから」
「はーいっ! ルル、写真とか持ってないの?」
「丁度いいことにテニス大会の写真が同封されている。見たいか?」
「見たい!」
問いかけに、シャーリーだけでなくスザクを除くクラスメイト全員が頷いた。スザクはルルーシュから何度となく妹の話を聞いている。写真も見たことがあるし、彼が重度のシスコンだということも理解している。教師も頷いていたのをしっかり確認していたルルーシュは、ふふんと高慢な笑みを唇に刻んだ。それはとても上機嫌なときの表情で、封筒から取り出した紙を人差し指と中指で挟み、ひらひらと揺らす。
「とくと見ろ。これが我が妹、神聖ブリタニア帝国第六皇女、マリアンヌ皇妃が長姫、ナナリー・ヴィ・ブリタニアだ」
崇めろと言わんばかりの所作で写真が公開される。テニスコートをバックに写っているのは飴色の髪をポニーテールにし、サンバイザーをつけたテニスウェアの少女。腕に抱えているのは銀色のトロフィーで、感激のせいか色白の頬を赤くして満面の笑顔を浮かべている。ルルーシュのような芸術的な美貌ではないが、朗らかに咲き誇る花のような美少女にクラスメイトたちは歓声を上げた。リヴァルが先陣切って名乗りを挙げる。
「ルルーシュ、紹介してくれっ!」
「断固拒否する。ナナリーは例えスザクでも渡さない。奪いたくば俺と母上と父上と兄姉らを倒してからにするんだな」
すなわちブリタニアを丸ごと敵に回せと言い放ち、ルルーシュは満足そうに笑う。どうやら妹の愛らしさが認められて嬉しいらしい。結局その授業は、ルルーシュによる妹談義に費やされたのだった。





お兄様、お元気ですか? ナナリーはお兄様がいなくて寂しいです。今度の長期休みには帰ってきて下さいね。
2007年5月1日