MDウォークマンより私の話、聞いて
「ルル! やっと見つけたっ」
昼休みに裏庭の寂れたベンチでウォークマンを聞いていると、イヤホンに遮られることのない大きな声に呼ばれた。視線を上げれば校舎の影からシャーリーが駆けてくるのが見える。ペンを下ろし、ルルーシュは手元の紙を揃えてクリアファイルへと収めた。
「教室にも生徒会室にもいないんだもん。探したよ」
「スザクに聞かなかったのか?」
「聞いたけど、仕事中だろうから邪魔しない方がいいって・・・・・・」
シャーリーは口篭り、申し訳なさそうにつけられたままのイヤホンを見つめる。
「・・・・・・今、大丈夫?」
窺うような声音に、ルルーシュは軽く笑った。ウォークマンの本体を手に取り、停止ボタンを押す。引っ張ってイヤホンを外した。聞いていたのは先日行われた義兄シュナイゼルと中華連邦の外交対談の一幕で、考察と対策をまとめて今夜テレビ電話をかけてこいと言われているのだが、放課後にやっても十分間に合うだろう。神子であり政治に関わることはないルルーシュを引っ張り出して楽しもうとしているシュナイゼルと、同じクラスで仲の良いシャーリー。学生であるルルーシュが今優先すべきは当然ながら後者だ。
「平気だよ。何か用か?」
「あ、あのね・・・・・・っ」
ぱっと頬を染め、シャーリーはいつもの彼女らしくなくしばし悩んだ後、後ろ手に持っていた一通の封筒を突き出した。
「これ! お父さんがくれたコンサートのチケットなんだけど、一緒に行かない!?」
ぱちりと眼を瞬いて見上げれば、シャーリーは慌てた様子で言い募る。
「もちろんルルがこういうの厳しいって知ってるから! だからその、カレンとスザク君も一緒に! 友達ってことで、ね!?」
懸命に告げる相手に、ルルーシュは悟られない程度に瞳を細める。皇子であるルルーシュに、確かにスキャンダルは厳禁だ。日本に留学しているからマスコミの目が少ないとはいえ、身分に変わりはない。だからこそ一対一ではなくグループで行こうというシャーリーの提案は、ルルーシュにとって悪いものではなかった。
だが、ルルーシュは自分がシャーリーの想いに応えられないことを知っている。高校を出たら神子として仕え、神殿から出ることはなくなる。結婚も出来ない。それは公になっていないけれども、確実に近づいてきている未来なのだ。シャーリーの気持ちには応えられない。だけど。
「・・・・・・分かった。待ち合わせは何時にする?」
封筒を受け取り、中のチケットをめくる。ぱっと顔を上げたシャーリーは一瞬驚いていたようだけれども、次にはさっきよりも頬を染めて嬉しそうに笑った。彼女の好意が嬉しい。
せめて残りの時間、彼女が笑っていてくれるように、出来ることをしたいとルルーシュは思っていた。
俺を好きになってくれてありがとう。
2007年4月18日