日焼けしたカーテン
ルルーシュの放課後は、大抵生徒会の活動で潰される。突発的にアイデアを提案しては、それを実行してしまう会長のおかげで、補佐側としては準備や後片付けなど大忙しだ。そうでなくとも予算を組んだり部活動の適正審査などもしなくてはならないので、放課後は自然とクラブハウス内の生徒会室で過ごすことになる。紅茶と茶菓子を片手に、ミレイと二人きり。うらやむ男子生徒がいるのなら是非代わってやりたいとルルーシュは思っていた。けれど幼馴染みに近い彼女と共にいることは楽だったし、企画の計画や実行などを手掛けるのも好きだったので、特別不満があるわけでもない。生徒会は自分に合っているとルルーシュは認めていた。
比較的仕事が早く終わったその日、クラブハウス前でミレイに別れを告げ、ルルーシュはグラウンド横の武道館へと向かった。アッシュフォード学園にはブリタニア人だけでなく日本人や中華連邦の民、EUの国民なども通っているため、それぞれの文化に因んだ数多くの部活がある。その中でも武道館を使う剣道部は日本国内でも指折りの強豪だ。身体に響くような掛け声に、最初は驚いたのを覚えている。けれど今はすっかりと慣れ、ルルーシュは誰も見ていないと分かっていたけれども、一礼して靴を脱ぎ、敷居をまたいだ。邪魔にならないよう壁際を伝って、二階の観覧席へと向かう。道場が一望できるそこからは、畳の上で柔道部が受け身の練習をしているのが見えた。ルルーシュの真下では、白い胴着をまとった部員が、綺麗な一本を奪っている。二本目の開始が宣言され、けれどそれを見ることはなく、ルルーシュは観覧席の一番後ろ、通路の壁を背に座り込んだ。カーテンを巻き込んで己を隠し、目を閉じる。聞こえてくる親友の声に、ルルーシュはまぶたの裏で彼の勝利を確信した。
黒いカーテンが日焼けして、その色を薄くしていくように。
ずっとずっと傍にいられたら。
「・・・・・・シュ、ルルーシュ」
闇だった視界が僅かに赤く染まり、呼び声にまぶたを押し上げる。カーテンを押し上げて覗き込んでくるスザクは白い胴着ではなく、黒の学ランをまとっている。浮かべられているのは喜びと苦笑いを混ぜたような微笑で、ルルーシュはそのまぶしさに目を細める。ほら、と伸ばされた手がルルーシュの指と絡まり、軽い力で引っ張り上げる。カーテンがふわりと膨れ上がった。
「待ってるなら、観覧席で見ててくれればいいのに」
何もこんな後ろの通路で寝てなくても、と唇を尖らせ、幾度聞いたか分からない言葉を紡がれる。
「いいんだよ。おまえの面を打つ姿は、もう十分焼きついているから」
「・・・・・・今度、練習試合があるんだ。見に来てよ」
「あぁ。負けたら許さないからな」
唇の端を吊り上げれば、必ず勝つよ、と強気な言葉が返される。床に置いていたルルーシュの鞄を拾い上げ、スザクは手を繋いだまま歩き始める。おとなしくその後を追い、ルルーシュはカーテンの影から抜け出した。共に辿る、帰り道。
どうかせめて、岐路までは共に。
ルルもスザクが大事なんです。
2007年4月13日