Cher Lamperouge
28.カウントダウン・パーティー
ミレイが任されたのは、今週末に河口湖へ旅行に行かないかと生徒会のメンバーに提案すること。そして企画を必ずや実行に移すこと。ホテルと列車の予約、申し分ない小旅行のプランニング。ミレイに任されたのはそれだけだ。
だからこそ今の状況は、すべて予定外のことである。幾許かの点は、確かに危惧していたけれども。
「まさか、ここまで予想されていたのですか?」
密やかな問いかけに、主はうっすらと微笑んだ。ホテルに到着した瞬間、雪崩れ込んできたテロリストたち。いくつもの銃を向けられて、ミレイたちは一室に向かうよう歩いている最中だった。
河口湖を含む富士五湖はサクラダイトの産出地であることから、毎年サクラダイト生産国会議はこの場所で開かれる。ホテルを名指しで指定され、ミレイも主の目的が会議であることは理解していた。そしてアッシュフォードの情報網で調べると、それ以上の目的が主にあるだろうことも察した。勉強として会議に臨席するエリア11の副総督、ユーフェミア・リ・ブリタニア第三皇女殿下。知らないとは思わない。主の情報網は、何をどうしているのかアッシュフォード以上のものだ。だからこそ、主は知っていてここに来た。
では、今こうしてテロリストの人質になっているのも、主の予測の範囲内なのだろうか。
おそらくそうだろうと、ミレイは思う。ちらりと覗き見る主の横顔があまりにも平然としているからだ。もちろん表面上は「人質になって脅えている少年」を装っているけれども、そうでないことはミレイにも分かる。おそらく少し離れた位置でニーナとシャーリーと共にいるカレンも分かっているだろう。リヴァルの言葉を思い出し、納得する。我らが主は、まったくもって素晴らしい女優様だ。
「交渉は上手く行ってないな」
倉庫のような部屋に押し込められ、銃を向けられながら固まっている人質たちの中、囁くような小声で主が言う。
「一人、連れて行かれましたね」
「見せしめだろう。まだ突入されていないのはユーフェミアがいるからに過ぎない。コーネリアは決してテロには屈さない」
「どうなさるのですか?」
「さぁ? 案外スザクが助けに来てくれるかもしれないぞ。何たってあいつはブリタニア軍人様だからな」
肩を竦められる。主が言うから生徒会への加入を許したけれども、ミレイにとってスザクはまだ敵という印象が強い。あの、七年前の邂逅がすべての所以になっている。助けは待つものじゃない。手に入れるべく努力するものだ。
「ミレイ」
「はい」
「ニーナとシャーリー、それとユーフェミアへの処理を」
「畏まりました」
やはり主の目当てはユーフェミアだったのだ。視界の端に映るピンク色の髪に唇が歪む。眼鏡ひとつで隠せる身分なんてどれほどのものなのか。滑稽だと、ミレイは笑った。
さぁ、パーティーの幕が上がる。
2007年7月1日