Cher Lamperouge
18.セクメトの箱詰め
中学一年の時に目をつけ、「親愛なる友」になってから五年。出会い頭の直感に違わず、リヴァルは悪友との関係を楽しんでいた。満足していると言い換えても良いのかもしれない。半年でようやく家に招かれ、そこでランペルージ家がブリタニア貴族男爵の位を持っていることを知り、そして悪友が現当主であることを知らされた。表立って社交界に出てはいないものの、株やら投資やらで随分と儲けているらしい。だったらバイクぐらい買ってくれても、と言ってみたところ見事に鼻で笑われた。それすら美人だと思ってしまったものだから、自分は相当この悪友に傾倒しているのだろう。それでいいとリヴァルは思っていた。五年のときを経て、この悪友になら振り回されてもいいと認めたのだ。
だからこそ今、テロリストの暴れているシンジュクゲットーなんかをバイクで走っちゃったりしている。
「リヴァル、そこの角を右に曲がれ。その後すぐに左で直進」
「イエッサー」
サイドカーに乗っている悪友は、携帯電話を耳に装着して手元の手帳に何かを書き込んでいる。時折聞こえてくる名前からして、通話相手はランペルージ家の執事のようだ。ディートハルトとはリヴァルも顔見知りである。かの執事もまた自分とは違った点から、悪友に傾倒している人物だとリヴァルは判断していた。一癖ある人間に好かれやすいんだよなぁ、と自分のことを棚にあげてリヴァルは思う。
「んで、ルルーシュ? 目当ての赤いナイトメアはどこよ?」
「今ディートに確認させている。クロヴィスの布陣は笑えるほどに浅はかだが、イレギュラーが出てきたらしい」
「イレギュラー?」
「白いナイトメアだ。グラスゴーとは段違いの機動力とか何とか。一体誰が作ったんだか。単機で出てくるということはクロヴィスの手駒じゃないな。コーネリアなら自ら乗るだろうし・・・・・・シュナイゼルか」
皇族を呼び捨てにし、尚且つ馬鹿にする悪友の正体をリヴァルは知らない。推測してはいるけれども、教えられない限り正解は得られない。教えてもらえるまでに自分を格上げさせなければ、その領域に足を踏み入れることは許されないのだ。だからこそ今はバイクの運転手に徹している。
「ルルーシュ、白いナイトメアってあれじゃん?」
バイクを停止させ、一本離れた通りを指差す。崩壊しているビルの合間に見える、戦場には似つかわしくない目映い機体。可笑しいことにそれは逃げ遅れた母子を救助していた。その隙を縫って赤いグラスゴーが逃亡しようと加速するが、それもすぐに捕らえられる。確かに段違いだとナイトメアに精通していないリヴァルでさえそう思った。グラスゴーの赤い両腕が吹っ飛ぶ。コクピットが分離して射出され、悪友が笑みと共に指差した。
「追え、リヴァル。絶対に見失うなよ」
「んじゃ、本気でいってみますか!」
動かない白い機体を視界から追いやり、小さくなっていくコクピットを目指してアクセルを握る。サイドカーが加速で少し浮いたけれども、悪友は開いている手帳を手放さない。揃いのゴーグルでリヴァルはひたすらに空飛ぶ箱を追いかけていく。まるで宝物を拾いに行くようだと思いながら。きっと、中に入っているのは金銀財宝などではないけれど。
その10分後、リヴァルは宝箱の中身を知る。ひゅうっと口笛を鳴らすと、悪友が心底楽しげに「俺の家まで運べ」と命じた。
アニメに合流。
2007年5月27日