【「神の島 ver 黒騎士ロイドシリーズ」を読むにあたって】
この話は、アニメ19話「神の島」で無人島に行ったのがカレンじゃなくて黒騎士ロイドさんだったらどうなっただろうか、という話です。
非常にパラレルですので、そういったもの、もしくは19話ネタバレが嫌な方は決してご覧にならないで下さい。
パラレルのパラレルと思って楽しんで頂ければ幸いです。
▼ GOGOロイドさん! ▼
神の島 ver 黒騎士ロイドシリーズ
ブリタニア第二皇子シュナイゼルは、「神の島」と呼ばれる無人島に来ていた。すでに亡くなった義弟クロヴィスが調査を進めていたという、皇帝も執着している超古代遺跡を見にだ。報告によれば式根島から忽然と消えたユーフェミアとその騎士、ゼロとその騎士も同じ島にいるらしいが、今のところシュナイゼルには彼らを探す気がなかった。もちろん会いたいという気持ちはある。しかしそれは義妹ユーフェミアでも、もちろんすでに部下ではない枢木スザクでも、特派を抜けて黒の騎士団に入った悪友でもない。会いたいのはゼロ、親愛なる義弟のルルーシュだけだ。それでもシュナイゼルはまだ再会の時期ではないと思っていた。今しばらく互いに力をつけた上で組み、ブリタニア皇帝を倒せばいい。だから今はむかつくけれども悪友に預けておこう。そう、思っていたのだが。
やはり、聞くと見るとは大違いである。落ちてきた大地に立っていた漆黒の影を視界に映した瞬間、シュナイゼルは歓喜した。横の三人に邪魔だ退けと心の底から思いながら。
大地の上に、四人の人物が立っている。まずはエリア11の副総督であり、ブリタニア第三皇女のユーフェミア。彼女は何故か、敵であるはずのゼロの腕にしがみついている。ああ、ゼロの正体に気づいたのか、とシュナイゼルは感心した。コーネリアに守られて育ったため使えない妹だと思っていたが、やはりブリタニア皇族の血が流れているらしい。流石だと、シュナイゼルは珍しくユーフェミアを褒める。そんな彼女を本来守るべき役目のスザクは、パイロットスーツの後ろで手を縛られ、しかも片足を折られているらしく添え木を当てて、大地に膝をついている。おそらく彼を活動不能に陥れたのはロイドだろうが、それにしては拘束が甘い。いっそ殺してしまえと思いながらシュナイゼルが悪友を見ると、土煙の中、アイスブルーの右目と視線がかち合った。身体を包んでいるパイロットスーツと、左目を覆っている眼帯は黒。ロイドはへらりと笑ってみせ、マントの男を振り向いた。仮面をしていても分かる。シュナイゼルの大切な弟が、そこにいる。七年を経て美しく成長した、その姿で。
「主、あそこにガウェインがあるから乗ってっちゃいましょう!」
眼帯の男が逃亡者であるロイドだということに気づいたのだろう。周囲の軍人たちが一斉に銃を構えるけれども、シュナイゼルはその中に足を踏み出した。殿下、というバトレーの言葉も無視をする。腰に帯びている剣を抜き、跳躍の元、振り下ろした。受けたナイフの向こう、右目が笑う。
「相変わらず性悪だねぇ、君」
「おまえのようなマッドに言われたくないな」
「っていうか、まだ時期じゃないんじゃないの?」
「目の前にして気が変わった」
剣を払い、シュナイゼルはロイドの奥、ゼロに向かって笑みを浮かべる。
「久しぶりだな、ルルーシュ。こうしておまえにまた会うことが出来て、本当に嬉しいよ」
崩れる瓦礫の中、声は確かに届いたのだろう。ゼロの肩が震え、隣のユーフェミアが目を見開く。素直な反応を示す弟妹に微笑し、シュナイゼルは剣を構え直した。しかしその切っ先はゼロではなくロイドに向けられていて、彼はにこやかに告げる。
「ルルーシュ、ここは危険だから、おまえは先にガウェインに乗っていなさい」
「・・・・・・は?」
呟いたゼロことルルーシュには、シュナイゼルの言葉が理解できない。しかしすべてを読み取ったらしいロイドは、サバイバルナイフを逆手に構える。
「残念、主とガウェインの複座に乗るのは騎士である僕だよ。君はさっさとアヴァロンに帰ったら?」
「何もなければ素通りするつもりだったが、会ってしまったのだから仕方ない。愛しい弟と共にいたいと思うのは当然のことだろう?」
「だからってタンデム? 悪いけどそれは僕の役目なんだよねぇ」
「ルルーシュ、すまないがおまえの騎士の動きを封じさせてもらうよ。大丈夫、殺しはしない」
「出来るものならやってみれば? 主の前で本性を出せるならだけどねぇ、性悪皇子様!」
「そろそろ決着をつけるべきだと思っていた。黙れ、このマッドが」
何が怖いって、そのやりとりが笑顔で行われていることだろう。正体を一目で看破され、騎士と義兄のやり取りにルルーシュが呆然としていると、ユーフェミアがその腕を引く。
「ルルーシュ、今のうちです」
彼女はそのままコクピットが開かれているガウェインへと向かう。足を折られているため立ち上がることの出来ないスザクが、それでも声を張り上げた。
「待て、ゼロっ! ユーフェミア殿下を離せ!」
むしろ拘束されているのはこっちだとルルーシュは言いたかった。スザクの位置からだと、ルルーシュの腕をしっかりと握っているユーフェミアの手が見えないのだろうか。そんなことはないはず、とルルーシュは引きずられながら考える。ガウェインのコクピットにルルーシュを押し込み、ユーフェミアはその隣の席に自らの身を滑り込ませる。
「ユーフェミア殿下!」
「黙りなさい、スザク! 私はゼロと共に行きます!」
「何を言ってるんですか!?」
「私はもう決めたのです! スザク、ハウス!」
その瞬間、ルルーシュはスザクの頭に茶色の犬耳が見えた。飼い主に捨てられた犬のような表情に、じゃあ俺が代わりに拾ってやるから、なんて考えるけれども、ガウェインは無情にもそのコクピットを閉ざす。あぁ、というロイドとシュナイゼルの叫びも中途半端に途切れた。ユーフェミアは頬を薔薇色に染めながら、手元のボタンを押し、操縦桿を握りしめる。
「お姉様にナイトメアフレームの動かし方を習っていて良かった! 行きましょう、ルルーシュ!」
「・・・・・・どこに?」
「私とあなたの幸せの土地へ!」
どこだそれ、とルルーシュは思った。激しくナイフと剣を合わせていたロイドも、慌てて前進し始めたガウェインの腕にしがみつき、肩に乗る。
「ああああああっ! 主の初めての複座の相手は絶対に僕だって決めてたのにぃ!」
うわーん、と悲鳴を上げるロイドの反対側の肩に、シュナイゼルもひらりと飛び乗る。彼は見事なロイヤルスマイルで場を見下ろし、バトレーに向かって手を振った。
「グランストンナイツに『計画を前倒しにする』と伝えてくれ。『黒の騎士団で待つ』と」
「で、でででででで殿下!?」
「さぁ行こう、ゼロ。私とおまえが組めばブリタニアの崩壊なんてあっという間だ」
ははは、とシュナイゼルが軽快な笑い声を上げる。どうすればいいのかと立ち往生しているグラスゴーたちに、ユーフェミアは「邪魔です!」と言ってハドロン砲の発射スイッチを押した。ありえない出力の一撃が放たれ、漆黒の機体は宙に浮いていく。飛行するガウェインのコクピットから見下ろせば、「殿下ー!」と叫び続けるバトレーは哀れで、そしてスザクは相変わらず「おすわり」状態のまま。高笑いどころか、ルルーシュは乾いた笑みすら浮かべることが出来ない。
こうしてゼロは己の騎士とガウェイン他おまけ二名をくっつけて、アジトへと帰還するのだった。
「やぁ、いつも弟が世話になってるね」なんて言ってシュナ様は騎士団にご挨拶したそうです。
2007年3月16日