【「美と花は白に笑う」を読むにあたって】

この話は「枢木さん真綿計画」の一環です。
「枢木スザクを真綿で首を絞めるかのようにじわじわと甚振る」という趣旨に則って作られた話であり、白主従(ユーフェミア&スザク)に対して非常に優しくありません。
ですので、そういった話が許せない方、好みでない方は決してご覧にならないで下さい。
閲覧後の苦情は申し訳ありませんがお受け出来ません。少しでもやばいと思われた方は今すぐお戻り下さいませ。むしろレッツリターン!



▼ 大丈夫です、読みます ▼

















































美と花は白に笑う





ユーフェミアの騎士に任命され、それを受け、日付が経つにつれてスザクは自らの行動を見直さずにはいられなくなってきていた。主のユーフェミアはエリア11の副総督であり、平時は書類整理や式典に参加したりなどの責務をこなしているが、軍人であるスザクは執政に参加することが許されず、傍に控えることしか出来ない。しかし、それはユーフェミアも同じだった。彼女は副総督という立場にありながらも無知だったため、発言はすべて夢見事だと一笑され、会議に出ても座っているだけで出来ることなど何もない。スザクという名誉ブリタニア人を騎士に任命し、コーネリアの庇護を拒否した今、ユーフェミアには価値などないと周囲はあからさまに示していた。
そんな日々が続き、ユーフェミアは己の不甲斐なさをスザクに見せたくないためか、彼にずっと休んでいた学校に行くよう勧めた。スザクは迷いながらも、ランスロットと特派のない今、軍に居場所もないためその申し出に頷いた。ユーフェミアの平和への希求を素晴らしいと思う気持ちは変わらない。けれど、それだけでは駄目なのだと、スザクはようやく気がついた。

久しぶりに足を運んだ学園は、スザクの望みを現しているかのように穏やかだった。放課後、さぼらずに出席していたルルーシュに誘われて、彼の妹のナナリーも一緒にクラブハウスでお茶を飲む。彼らの笑顔とあまりにも温かく受け入れてくれる空間に、スザクは込み上げてくる涙を懸命に隠した。彼らは本当に優しいと思い、そこでふと気づく。今目の前にいるルルーシュとナナリーも、身分を偽って隠れてはいるけれども、れっきとしたブリタニア皇子皇女なのだ。彼らも幼い頃のまま皇室に育っていたら、きっと騎士を持ったのだろう。そんなことを考えてしまったら、ふと口が動いていた。
「主と騎士って、何なのかな」
ぽつりと落ちた呟きに、ナナリーが持ち上げようとしていた紅茶のカップを止める。苺のミルフィーユを食べていたルルーシュもフォークを止めたが、その仕草はあまりに優美でスザクは思わず見惚れかけた。やはり皇室で育っただけあって、彼らの所作はとても美しい。ルルーシュなんて自分と違い、パイの欠片すら零していないのだから凄いと、関係のないことをスザクは思う。
「何だ、急にどうしたんだ?」
「もしかしてスザクさん、他の騎士の方に虐められているんですか?」
「いや、そんなことないよ。ただちょっと・・・・・・僕は護衛しか出来ないから、不甲斐ないなと思って」
案じるかのような言葉をかけられ、スザクは慌てて笑顔を浮かべる。ナナリーはやはり不安げに眉を下げたけれど、ルルーシュはそんな妹を宥めるかのようにスザクの質問に答えた。
「そうだな、騎士に求められるものは主によって変わる。例えばコーネリアの筆頭騎士はギルフォードだが、彼に求められるのは戦場に立つ主を守り補佐する実力と、戦術を読み取る適確な能力」
なるほど、とスザクは思う。言われてみれば確かにギルフォードが最も騎士として役目を果たしているのは、コーネリアと共に戦場に立っているときだ。それは彼が軍人だからではなく、主のコーネリアが軍人だからなのか、と納得する。
「逆にクロヴィスの騎士は、クロヴィス自身が武芸に秀でていなかったから、主の身を守り、政務のフォローも出来る人材だっただろうな」
俺は知らないけれど、とルルーシュはそっと瞼を伏せて亡き兄を語る。今度はスザクが話を変えるように口を開いた。
「それじゃあルルーシュとナナリーだったら、騎士にどんなものを求める?」
問いかけにルルーシュは思考するように視線を苺のミルフィーユへと落とす。ナナリーは花のように笑って、スザクの質問に答えた。
「私は、私のことを一番に愛して下さる方を望みます」
「あ、愛!?」
「はい。騎士は常に主を一番に考える人にしか務まりませんから」
予想もしていなかった単語が出てきてスザクは面食らったが、続いた言葉に息を呑んだ。ナナリーは、主を一番に考える人だけが騎士になれると言う。ならば自分はどうだろう。ユーフェミアを常に一番に考えることが出来るだろうか。無理だ、と心の奥で囁く己がいる。
「手を取り合って、ときどき一緒にお茶をして、二人でいて安心できるような方に、私は騎士になって頂きたいです」
ナナリーが嬉しそうに兄に微笑みかけると、ルルーシュは残りのミルフィーユを平らげ、肩を揺らして笑った。
「俺はそうだな、料理の上手い騎士がいい。特に苺関係」
「・・・・・・苺?」
「ああ。それでいて互いに信じ、頼ることの出来る関係がいい。俺を信じてついてきてくれるなら、その思いには全力で応えよう。絶対に裏切ったりしない。見捨てない。苺もうまいし、毎日忠誠のキスをしたがる以外は文句もない」
「もう、お兄様ったら」
くすくす、とナナリーが肩を揺らす。二階のバルコニーを見上げるようにして言われた台詞はどこか具体的だったけれども、スザクは黙ってその内容を反復した。信じ、頼ることの出来る関係。自分はユーフェミアを信じ、頼れるだろうか。何も出来ず、互いの力になれない主従であるというのに。
「騎士に求めるものなんて、主によって違うさ。ユーフェミアがどうしておまえを騎士に選んだのかは知らないが、それなりにおまえに感じるところがあったんだろう。それを信じていればいい」
励ますように、ルルーシュはスザクの皿に二切れ目のミルフィーユを載せる。パイ生地がさくさくとしていて香ばしいそれは甘さが絶妙で、一体どこの店のものだろうとスザクは思った。苺にフォークを突きたて、ナナリーも美味しそうに口へ運ぶ。
「好きだなんて感情で、ユーフェミアお姉様がスザクさんを選んだんじゃなければいいのですけど」
スザクがはっと顔を上げる。しかしルルーシュは妹に向け、あり得ないというように手を振った。
「ナナリー、ユーフェミアだってそこまで無知じゃないさ。騎士と主の間に必要なのは愛と忠誠だ」
「恋が芽生えたら、それは主従ではなく恋人ですものね」
「そう、主従は戦友であって、恋人じゃない。好きなだけで選んだのなら、それは騎士にとっても周囲に対しても酷い侮辱だ」
鮮やかに、兄妹は笑った。緑の庭で、花に囲まれながら、優しい世界で美しく、尊く。

「スザク、騎士は主のためだけに身を捧げ、尽くし、すべてを捨てる者の名だ」
「そして主はその生き様をもってして騎士に応える。それが主従ですよ、スザクさん」

気高いルルーシュと花のようなナナリーに、スザクは何も言うことが出来なかった。自分の騎士という身分や、自分たち主従の在り方は、まるで子供の遊びなのだと今ようやく自覚した。名乗ることさえ、きっと恥に違いない。
スザクの前で微笑む二人は、まぎれもない戦場を知る皇子皇女だった。





時間軸としては少し先のお話。騎士Sは二階のバルコニーで主たちの言葉に喜んでます。ロイドさんは感涙してるんじゃないかと。
2007年3月15日