にょたルルーシュ&ニーナ! もしかしちゃうと最強コンビ?
放課後、科学部へ向かおうとしていたところに声をかけられて、ニーナは慌てて振り向いた。階段を早足で上がってこようとしているのは、クラスメイトのルルーシュだ。友達と呼ぶことを許されているし、実際にそう紹介しないと唇を尖らせて拗ねられてしまうけれども、ニーナにとって彼女は、「友人」とカテゴライズするには余りに眩しすぎる人物だった。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。神聖ブリタニア帝国の第三皇女、かつ十七位皇位継承者。まだ高等学校に籍を置く身でありながら政治経済に精通し、他国の首脳を相手に国交を繰り広げている年若き女傑だ。宰相を務める第二皇子シュナイゼルの右腕と称され、その美しい黒髪から「黒の皇女」と讃えられている。
そんなルルーシュと、ニーナは幼馴染だった。ニーナの祖父がルルーシュの母、マリアンヌの専用ナイトメアフレームの開発者であり、その縁から物心がつく頃より折に触れては交流を持っている。特に同じ学校に入学してからは、ほとんどと言っても良いほどに毎日を共に過ごしていた。理由は家の関係だけではない。
「ルルーシュ君! どうしたの? 今日は中華連邦に行くんじゃなかった?」
「ああ、これから向かう。その前にニーナに少し用があって」
階段を上がりきり、向かいに立ったルルーシュは女性にしては背が高い。艶やかな髪はショートカットで、常々勿体ないとニーナは思っている。幼い頃、伸ばされていた髪はそれはそれは美しかったのに。けれど今は逆に、短い襟足から覗くうなじの白さが別の意味で周囲の目を引く。美しい人だと、ニーナは出会ってから十年以上が経つというのに、未だルルーシュに見惚れて止まない。
「今度の日曜日、空いてるか? 午後から夜にかけてになるんだが」
「えっと・・・空いてるよ。おじい様の研究室に行くのは土曜日だし」
「そうか。いや、クロヴィス兄上に国際展示場で行われる世界科学博覧会の招待状をいただいたんだ。関係者へのセレモニーを含んだものだけれど、一緒に行かないか?」
「行く! 行きたい!」
「決まりだな」
世界最先端の技術の祭典に、思わず科学者としての血が騒いでしまった。飛びつくように挙手したニーナに、ルルーシュは唇を吊り上げて微笑む。
ルルーシュは政治家としてはもとより、理数系にも秀でた頭脳を持っている。オールマイティな才能を有しながらも、理路整然とした数学や物理を好むのだ。その点が、自分がルルーシュと親しくなれた一番大きな要因だとニーナは考えている。理系でよかった、とルルーシュと話をする度に思うのだ。
「セレモニーだと、やっぱりドレス?」
「ああ。俺はこの格好で行くつもりだけど」
腰に手を当てるルルーシュは、学校だけれど政務に向かう途中のため、正装に身を包んでいる。本来ならば皇女であるためドレスが義務なのだろうが、世界中を飛び回ることから動きやすいパンツルックだ。長いマントがひらめけば、その内の細い身体が垣間見える。折れそうなくらい華奢な腰や、滑らかなヒップライン。豊満な胸を飾るリボンタイ。黒と白、そして紫と赤をあしらったそれは正しくルルーシュのために誂えられたもので、彼女以外が着ても決して似合うことはないだろう。その証拠に、放課後で人の少ない廊下でも、すべての生徒がルルーシュに見惚れて足を止めてしまっている。ほう、とニーナは厚い吐息を吐き出した。
「・・・新しいドレス、おじい様におねだりしようかなぁ」
隣に並ぶのにせめて相応しくなるように、と考えて呟けば、ルルーシュが笑う。
「なら、俺に選ばせてくれないか? この服と対になるようなドレスがいいな」
「エスコート、してくれるの?」
「もちろん。お手をどうぞ? お姫様」
ウィンク付きで差し出された手に手を重ねてみたら、悪戯に甲にキスされた。思わず真っ赤になって「ルルーシュ君!」と叫べば、明るい笑い声が返される。その表情が優しくて、ニーナも笑みを誘われてしまった。憧れの、素敵な人なのだ。同性に対して行き過ぎた想いは恋かもしれない。愛かもしれない。でも、それでも。
「ルルーシュ君、大好き」
囁きに微笑を返してくれるから。だからニーナはルルーシュを常に想う。今はまだきっと、友達として。
2010年ハルコミ無料配布ペーパーより。
2010年5月23日