【 「正義を殴打」を読むにあたって 】
(注意1)
この話には未成年者の閲覧にふさわしくない表現が含まれています。具体的に言えば、オリジナルキャラクターが性的な単語、性行為を思わせる発言をし、陵辱(未遂)を含んだ残虐な行為等を行います。
ですので、そういった話が許せない方、好みでない方、不快に感じる方は閲覧をご遠慮下さい。
(注意2)
この話にはR2第12話「ラブアタック!」のネタバレを限りなく僅かに含みます。加えてスザクに対して優しくない発言があります。
ですので、そういった話が許せない方、好みでない方、不快に感じる方は閲覧をご遠慮下さい。
閲覧後の苦情は申し訳ありませんがお受け出来ません。少しでもやばいと思われた方は今すぐお戻り下さいませ。個人的には未成年者の方の閲覧はあまり歓迎出来ません。
閲覧するかしないかの選択の自由と責任は皆様に御座いますので、どうかその点をご理解下さいませ。それでは、心の底から「何でも大丈夫」という方のみどうぞお進み下さい。
・・・・・・何かもう、いろいろと酷い話ですみません・・・。でもやっておくべきだと思ったんです・・・。
▼ 大丈夫です、読みます ▼
諦めるなと言ってくれたゼロを、ルルーシュを何度も思い返して、それでも独房という暗闇がカレンを蝕んでくる。時間さえ分からない孤独は様々なことを思い起こさせ、何度も涙がカレンの目尻を湿らせた。ルルーシュは今、どうしているだろうか。戦局は一体どうなったのか。黒の騎士団のみんなは無事だろうか。アッシュフォード学園は。お母さんは。引き寄せた膝に額を押し付けて慟哭する。
「お兄ちゃん・・・っ・・・!」
「―――死んだ人間に縋って何か意味でも?」
ひとりであるはずの空間に、縦に細い光が差し込んでくる。久しぶりの蛍光灯が眩しすぎて、カレンは瞳と共に顔を歪めてしまった。誰かが、独房の中に入ってくる。ドアが閉まる。外界がまた遠くなる。迎えは来ない。また、ひとり。けれどパチリと音を立てて電気がつけられ、部屋が突如明るくなった。驚いて顔を上げたカレンの視界の中で、金髪の少年が唇を吊り上げて笑っている。
「やぁ。はじめまして、婚約者殿」
しゃがみこんで覗き込んでくる顔は、カレンの初めて見るものだった。光を背負って少年は笑う。
正義を殴打
少年は、今年18になるカレンによりも一つか二つ年下のようだった。まだあどけなさの残る顔立ちは、ブリタニア人特有の白い肌をしている。瞳の色は陰になっているせいで見えないが、ふわりふわりと揺れている金髪はまるで絵画に描かれている天使のようだった。大きな瞳と赤い唇が、より彼を中性的に見せているからかもしれない。軍服にさえ身を包んでいなければ、社交界の招待客が間違えてきてしまったのかと信じただろう。少年はカレンの顔を覗きこみ、ふっと小さく笑いを漏らした。
「婚、約者・・・?」
言われた言葉の意味が分からなくて呆然としたカレンに、少年は笑みを深める。
「そうだよ。はじめまして、紅月花蓮。それともカレン・シュタットフェルトと呼んだ方が?」
「っ!」
「それにしても驚いた。まさか名家シュタットフェルトのお嬢様が、反ブリタニア勢力のエースだなんて」
息を呑んで気を張り詰める。睨み付ければ少年は優雅に身を起こし、カレンに向けてわざとらしいほど丁寧に礼を取った。淑女に対する紳士のそれは、間違いなく独房に不釣合いだった。
「僕はリーフェンシュタール伯爵家が当主、ミハエル・リーフェンシュタール」
「伯爵家・・・? 何でそんな貴族が」
「君の母上が望まれたのさ。シュタットフェルトは名家だけれども爵位がない。僕の家は事業に新たな伝が欲しかった。だから利害が一致して年の近い僕と君の婚約が組まれた」
「何それっ! そんなの聞いてない!」
「そりゃ一年も家出してれば聞く機会もないだろうね。まぁこの話はもう白紙に戻ってるよ。カレン・シュタットフェルトは失踪してるし、婚約を組んだ僕の父も半年前に亡くなった。つまり会うこともなく僕と君は婚約して、そして破棄するに到ったわけだ」
だけど、と少年―――ミハエルは両腕を広げる。そこで初めてカレンは彼が身にまとっているのが一般兵の軍服ではなく、スザクやシュナイゼルに近い装飾の多いものであることに気がついた。
「だけど僕と君は出会わないはずだったのに、こうして出会った。運命だと思わない?」
「はっ! 馬鹿じゃないの!?」
「まったくだ。だけど僕は、この巡り合いに心から感謝しているよ」
にこりとミハエルは微笑んだ。純粋な好意に溢れているその笑顔は、幼い子供の無邪気さを感じさせる。だからか、カレンは気づけなかった。理解したときには腹に彼の靴先が埋め込まれており、酷い痛みが腹部から全身に伝わっていた。
「ぐっ・・・!」
床に倒れ込んで噎せ返る。何度も咳を繰り返すと喉が痛んで、変な音が僅かに鳴った。見上げればミハエルはまだ笑みを浮かべていて、けれど彼は己の右足をふらふらと揺らしている。
「拷問を受けるのは初めて? 大丈夫、婚約者のよしみで優しくしてやるよ」
「や・・・!」
「女だってことを考慮して、顔も殴らないでおいてやる。どう、優しいだろう?」
「・・・っ!」
次々と容赦なく繰り出される蹴りを避けることも出来ない。手は後ろで縛られているし、拘束服はカレンの動きを自由にしてくれない。ただただ身体に蹴りこまれる爪先を享受するしかなくて、理不尽な暴力にカレンは怒りと痛みで泣き出してしまいそうだった。けれどそれだけはプライドが許せなくて、必死に堪える。伸びてきた手が胸倉を掴み、ミハエルの愛らしい顔が目の前に来た。
「あぁそれとも、女にはこっちの方が効果的かな?」
次の瞬間、ボタンの弾ける音がして、カレンの胸元があらわになった。そのいきなりの寒さではなく、次に与えられる屈辱を察知して全身が硬直してしまう。無駄と分かっているはずなのに思考は飛び、カレンは本能の恐怖のままに暴れ叫んだ。
「嫌・・・っ! 嫌! 放して! 触んないで!」
足元で縛られているため、蹴ることもできない。ただ身をよじって離れようとしても、ミハエルの手はその美しさからは想像も出来ないほどの力で拘束してくる。指先が首筋から鎖骨を辿る。カレンの肌が嫌悪感に鳥肌を立てる。
「へぇ、意外に大きいんだな」
ぷちり、ぷちりと手のひらが下に向かうと同時にボタンが外されていく。紅蓮弐式のパイロットスーツから着替えさせられる際に支給された、飾り気のないブラジャーがカレンの眼下にも曝される。ミハエルの手がその上から唐突にカレンの乳房を握り込んだ。
「痛っ・・・!」
「おまえ、処女? ゼロに抱かれてないんだ?」
「!」
かっと赤く染まったカレンの頬を返事と受け取ったのか、ミハエルはもう片方の手でカレンを押さえ込み、その身体の上に跨った。蛍光灯の光を背にして、純白の軍服が闇色に染まる。愉快げに歪められている唇に、己の乳房を掴んで放さない手に、ついにカレンの瞳から涙が零れ落ちた。嫌、と訴える声は弱弱しく震えていた。ミハエルはやはり微笑んでいる。
「三人に一人」
カレンを組み強いたまま、彼は聞いてきた。
「三人に一人。何の割合か分かる?」
「・・・・・・?」
「ゼロと黒の騎士団がエリア11から去った後の、強姦されるイレブンの女の割合。三人に一人が、何らかの形で襲われてレイプされている。分かる? 三人に一人だよ。40人学級の女子校で考えれば、少なくとも一クラスに13人だ」
「っ!」
目を瞠ったカレンに、ミハエルはにこりと笑う。手のひらがようやく動き、再びカレンの首筋へと戻る。息づいているそこを確認するように、何度も何度も行き来させては楽しそうに話を続ける。
「行政特区日本に入らないということは、自らがイレブンだと、ブリタニアの奴隷であると認めたということ。奴隷に人権はない。だから犯しても構わない。珍しく拘束された犯人のうちの一人の主張だよ」
「ふっ・・・ふざけないで! そんなの許されるわけない!」
「そう? でも、今のエリア11じゃイレブンの価値なんてそんなものだよ。ゼロがはっきりと言ってしまったからね。『心さえ日本人なら、どこにいても日本人』だと。でもそんなのはブリタニアじゃ許されない」
手のひらが再びカレンの胸へと伸ばされる。先程とは違って優しく、触れるか触れないかの加減で下着の上から形をなぞり、時折冷たい指先がカレンの素肌へと触れては離れる。その度にカレンがびくりと震えれば、ミハエルは喉を鳴らすように笑いを漏らした。指がカレンの乳房に埋め込まれる。ゆっくりと、強弱をつけて愛撫が始まる。
「分かるかい、カレン。おまえは今はブリタニアの捕虜だ。何をされても仕方のない立場にいるんだよ」
「・・・いや・・・・・・」
「特に紅蓮弐式は、黒の騎士団のエースとも言える機体。恨みを抱く輩は多い。それが巡り巡っておまえにぶつけられることは当然だろう?」
「嫌・・・止めて・・・。お願い・・・っ」
「しかもおまえは女だ。陵辱して辱めることは容易い。数人がかりで押さえ込んで、その足を開かせて、大して慣らしもせずにいきなり突っ込まれるんだろうな。その年の割りに大きな胸も散々にいじくられて、口にだって何本咥えさせられるか分かったものじゃない」
「やめて! お願いぃ!」
「何人もの男たちに回されて、精液を注がれて、妊娠する可能性は大きい。ああ、もちろんその前に君が快楽に目覚めて、奴らの肉奴隷になる可能性の方がもっと大きいか。三日と経たずに自ら足を開くようになるかもしれない。処女膜はきっと、おまえの機体のように赤いだろうな」
「やめて・・・・・・もうやめてぇ・・・っ・・・」
ぼろぼろと涙がカレンの目から溢れた。それでもミハエルの手は止まらずに、カレンの肌を陵辱し続けている。その所作は決して乱暴なものではなかった。けれど冷たい指先が、カレンの恐怖を煽り続けて止まらない。このままでは自分の一番大切なものが穢されてしまう。女としての恐怖を、カレンは生まれて初めて感じていた。上半身を倒してきたミハエルが、耳元で囁く。触れる吐息ですら恐ろしくて、カレンは子供のように泣きじゃくった。
「綺麗な身体でゼロの元に帰りたいだろう?」
冷たい手のひらが、ようやくカレンの肌を離れた。そのままに頭へと回され、髪をすかれる。宥めすかすかのようなそれにも、身体の震えが止まらない。
「僕が守ってあげる。僕がおまえを守ってやるよ。だからおまえは、ただ僕の言うことを聞いていればいい。大丈夫、ゼロを裏切れなんて言わないさ。僕だってそんなに鬼じゃない」
ミハエルが身体を起こし、肩を掴んでカレン自身も起き上がらせる。まだ涙の止まらないカレンに代わって、拘束服のボタンを下から順々に嵌めていく。ずれたブラジャーを戻し、その胸の谷間に小さな機械を差し込んだ。
「これ、は・・・っ・・・?」
「知らなくていい。おまえはこの部屋に来る人間と、奴らの知っているカレンとして、いつもどおり話をすればいいのさ」
「来る人間・・・?」
「いるだろう? 何しろスザク・クルルギとはアッシュフォード学園で同じ生徒会に所属していたらしいじゃないか」
一番上のボタンを留め、ミハエルは「そうだろう?」と笑った。ようやくカレンの頭も思考回路を取り戻して、ゆっくりと軋みながらも動き始める。胸に差し込まれた機械は、おそらく音声を届ける盗聴器にも似たものだ。彼はカレンと、この独房に来る人間とのやり取りを知りたいのだろう。何故、とカレンは眉を顰める。
「僕はね、あいつが嫌いなんだよ」
すくっとミハエルは立ち上がる。細い手足に、もしかしたらカレンと同じくらいかもしれない身長。それでも腕力があり、重みがあった。おそらく軍人として鍛えているのだろう。顔立ちからは想像もできない振る舞いを、彼はいくつも見せている。けれど笑顔を消したのは今が初めてで、カレンは思わず息を止めて見入ってしまった。
「僕はね、スザク・クルルギが嫌いなんだよ。あいつのすべてを信じていない。『日本人を守るためにブリタニア軍人になった』? はっ! 笑わせるじゃないか。今まで日本人の処刑同意書に何百枚とサインしておきながら、よくそんなことが言える」
ミハエルが苛立たしげに前髪を払うと、金色の髪が蛍光灯で更に光り輝いた。眉根ははっきりと寄せられており、眼差しは遠い場所を睨み付けているのだろう。すでにカレンを見ていない。
「ゼロに託された100万人以外のイレブンも、奴は救う救うと口ばかりで結局のところ何も出来ていない。行政特区日本に招いて保護しているのは総督だ。中等学校も出ていない世間知らずが随分と必死にやってるよ。ローマイヤーが手ほどきしているとはいえ、あの努力は賞賛に値する。だけどクルルギは何もしていない。総督補佐とはいえ、奴が関わるのは戦場ばかり」
ちらり、ちらりとミハエルの瞳が前髪の下で光っている。目を細めながらもそれを見たくて、カレンはじっと彼を見上げた。
「その点では、ゼロは上手くクルルギに責任を押し付けたよ。すべてを救うことは出来ない、それを奴はちゃんと理解している。だけどクルルギはそれを知らない。理解しようとすらしない。世界は全部自分の見たものだけで出来ていると信じている、その甘さが気に入らない」
僕はね、とミハエルが振り向いた。瞳がまた陰になって、その色をカレンから隠してしまう。
「僕はね、クルルギを信じていないのさ。だってゼロは公衆の面前で処刑されなかった。ブリタニア皇族を二人も殺したんだ、その処刑は大々的に行われ、それこそ処刑台でも作って大衆の面前で仮面を剥ぎ、奴の素顔を世界中に知らしめた後に首を切るくらいのパフォーマンスをするべきだったと思わないかい? けれど実際は、ゼロは内々にクルルギによって処理され、そのまま闇へと葬られた。ゼロを知っているのはクルルギだけ。そしてそのゼロは今、復活している」
ミハエルがまた横を向く。一瞬差し込んだ光に、カレンは息を呑んだ。長い金色の睫毛が瞬き、ミハエルの瞳を隠して、そしてまたあらわにする。信じられない事実に、カレンは唇を震わせた。
「万人の目にしていない偉業なんて、そんなものは御伽噺と同じさ。だから僕はクルルギを認めない。証拠のない功績でラウンズの席についていることも不愉快だ。だから奴を引き摺り下ろす」
そのための君だよ、婚約者殿。ミハエルの指先がカレンの胸元を拘束服の上から突く。機械の冷たさを肌で感じたけれども、すでにそこに恐怖はない。ただ信じられない気持ちで、カレンは尋ねずにはいられなかった。見上げるミハエルは鮮やかな色彩をしている。ふわりふわりと羽根のような金色の髪。陶磁器のように滑らかな白い肌。男でありながらも鮮やかに赤い唇。そして、彼を愛らしく見せている一際大きな瞳の色は、扇と同じ、玉城と同じ、藤堂と同じ。
「・・・・・・黒・・・?」
唇を吊り上げて、ミハエルは哂った。
「―――敏い女は嫌いだよ」
独房を出たミハエルを待ち受けていたのは、彼の直属の上司に当たるアーニャだった。ミハエルはナイト・オブ・ラウンズのひとり、アーニャ・アールストレイムの直属隊であるメドラウトの隊長を任されている。簡単に言えば、彼はアーニャの参謀だった。年端も行かない少女に、その二つ年上なだけの少年。けれど彼らは度重なる戦場で、いくつもの功績を挙げてきた。
「・・・・・・大丈夫。コンタクト、ずれてない」
アーニャの進言に、ミハエルは上司に対してあるまじき舌打ちをする。けれどそれくらいは許されている仲なので、彼はドアに背を預けてアーニャを見た。
「それで、例のものは?」
「・・・・・・これ」
「オッケー。明日には結果を出させるよ。DNA鑑定で一致すれば、ランペルージは間違いなく第十一皇子だ」
差し出された透明なビニールに入った髪の毛を、ミハエルは一瞬眺めただけですぐに懐にしまい込んだ。場所は政庁であるけれども、アーニャは任務でエリア11に来ているわけではないので、今はアッシュフォード学園の制服を身にまとっている。副官であるミハエルは彼女の代わりにいくつかの業務をこなしているけれども、暇は暇だ。だからこそ余計なことに手を出したくなる。
「何故身分を隠しているのかは知らないけど、あんたが気づいたと知ったら、間違いなく相手は秘密を共有しようとしてくるだろう。そうすれば、少なくともルルーシュ・ヴィ・ブリタニアはあんたのものだ」
「アーニャの、ルルーシュ」
「そう。十年越しの初恋が叶うかもね」
携帯電話を手に少し黙っていたアーニャが顔を上げる。まっすぐに見つめられ、ミハエルは肩を竦めた。
「分かってるよ。僕が引き摺り下ろすのはクルルギだけだ。第十一皇子にはノータッチ」
「・・・なら、いい」
まぁ奴がゼロに関与していた場合は話が別だけれど。ミハエルは心中でそれだけ呟いて、アーニャを促して独房から離れた。角を曲がった頃に、反対側の廊下から車輪のすれる音が聞こえてくる。それが自分たちのいた場所で止まったことを知り、少し後で耳につけているイヤホンから声が聞こえ始めた。カレンと、総督である少女のもの。思い出したかのように、アーニャがぽつりと呟く。
「・・・そういえば、学園に機情の人間がいた」
「機密情報局? どんな奴だった?」
「肌が黒くて・・・・・・灰色の髪が長い、女」
「ヴィレッタ・ヌゥかな。姿を見ないと思っていたら機情に移動してたのか。アッシュフォードが機情の作戦区域。面白い」
イヤホンを通して伝わる会話は、想定していた以上の価値がありそうだ。スザクどころかエリア11すべてをひっくり返せそうな展開に、うっすらとミハエルは唇を綻ばせる。
「馬鹿は好きだよ。本当にね」
おまえだけが日本人を解放したがっていると思っているのか!
2008年7月1日