【「すべては愛しい君のため!」を読むにあたって】
この話は、R2第7話「棄てられた仮面」のネタバレを含みます。
ネタバレが嫌な方は、どうかご遠慮ください。それと今回はちょっと下世話ですので、どんな話でも大丈夫という方のみご覧くださいませ。
閲覧後の苦情は申し訳ありませんがお受け出来ません。少しでもやばいと思われた方は今すぐお戻りくださいませ。むしろレッツリターン!
▼ 大丈夫です、読みます ▼
慰めろ、ゼロ様がそう、仰った。
すべては愛しい君のため!
先の太平洋奇襲作戦が失敗に終わって以降、黒の騎士団はゼロからの連絡を一切絶たれていた。携帯電話にかけれど、何があったのかコール音さえ聞こえない。どうしたものかと団員たちがやきもきしていたところ、どうやら個人的な連絡法を得たらしいカレンによって、衝撃の事実がもたらされた。理由は分からないが、何でもゼロは今、酷く落ち込んでいるらしい。あの仮面を俯け、薄く骨張った肩を猫背にしているのかと想像すれば、それは大層可愛らしく、否、大層面白く、否否、大層とっても気の毒だ。ゼロは黒の騎士団のリーダーなのだ。彼には胸を張って命令する姿が似合うし、何より猫背のゼロなど非常に見たい、いや、見てられない。故に団員たちは考えた。ゼロを慰めて、どうにか元気を取り戻してもらわなくてはと。
「ここはやっぱり妻である私の出番ですねっ! ゼロ様、神楽耶が今参ります!」
両手で万歳をして、ぴょんっと神楽耶が飛び跳ねた。今は短くなったスカートの裾が僅かにめくれ、彼女の女性というにはまだ幼い白い太腿を垣間見せる。女に出来る慰めという方法を駆使するにはいささか色気が足りないが、まぁゼロもつるぺたが好みかもしれないし、可能性も無くはないだろう。器は大きいけれど夫につき従うことも出来そうな神楽耶に、黒の騎士団の団員たちはそんなことを考える。
「いや、ここは私の出番だろう。何よりゼロと一番親しいのは私だからな」
にやりと唇を吊り上げて膝を組み替え、C.Cはうっすらと脂肪のついた女の太腿を披露する。ごくり、と唾を飲み込む音も少しだけした。年齢不詳で外見だけなら十代後半に見える彼女だが、振る舞いは立派な女のそれだ。ゼロの愛人という噂は騎士団創設時から今も消えることなく囁かれており、それはブラックリベリオンで敵と相打ちで海に沈むことを選んだという行為によって否応無しに信憑性を増している。それに透けるように白い肌は、男なら誰でも一度は触れてみたくなるだろう。女の慰め、口調は高飛車だがC.Cならば難なくこなしそうだ。
「ちょ、ちょっと待ってよ! ゼロに『慰めろ』って言われたのは私! 私が慰めるのが筋でしょう!?」
焦って訴えるカレンが一度その慰めを拒否している事実を知らないので、団員たちは、まぁ胸の大きさならカレンが一番だろうな、と三人を見比べて批評する。一年前に比べて彼女のゼロに対する態度はどことなくフランクになった気がするが、おそらく神格化していた彼を敬愛だけでなく恋愛対象として身近に見ることに成功したのだろう。いいなぁ青春だなぁ、と団員たちはそんなことを考える。一部は自分が大人の階段を登ったのも彼女くらいの年だった、とリフレインじゃないが過去を思い返したりした。
「あらぁ、『慰め』なら必要なのは大人のテクニックでしょ? ここはアタシと千葉ちゃんに任せて、お嬢ちゃんたちは引っ込んでなさい」
「な、何で私がっ! 私がゼロにそんなことをする義理はない!」
キセルを吹かして怪しげに微笑むラクシャータは、確かに大人のテクニックが満載そうだ。変なところで純粋そうなゼロが彼女に食われる絵図がまざまざと想像されて、団員たちは半笑いになると同時に憧れもする。古今東西、年上のお姉様に翻弄されたい、でもってその後は逆に翻弄したいというのは、国を問わず男たちの願望であり理想でもある。
頑なになって否定する千葉がちらちらと藤堂を見ている理由は、もはや黒の騎士団で密やかに周知の事実だが、ストイックな彼女だからこそ母性の目覚めが期待できるかもしれない。ゼロを優しく包み込む千葉。あれ、もしかしてこれが一番慰めなんじゃ、と団員たちは気づいたけれども、ここはやはり藤堂を想う彼女の意志を尊重して、それ以上の想像は止めておいた。
はてさてそれでは、ゼロの慰めは女性四人にお任せしようか。そんな結論に達しかけた頃、藤堂が意を決したように呟いた。戦場では非常に有能で、それでいて人望も篤い彼なのだが、如何せんどこか空気を読みきれない詰めの甘さがゼロに似ていないようで非常に似ていると評判である。
「では、私は腹踊りをしよう」
腹踊り。ハラオドリ。はらおどり。え、ちょっと待って何それ、と多くの者が心中で呟きもしたが、黒の騎士団はそのメンバーのほとんどがイレブン、つまりは日本人で成り立っている。すなわち彼らは「腹踊り」が何なのかを知っていた。それを、藤堂がやるのか。その立派に鍛え上げられ六つだか八つだかに割れているだろう腹筋に絵の具で目と鼻と口と眉毛を描き、くねくねと身体を動かして表情をつけて笑いを取るという伝統の宴会芸を、彼がやるのか。厳島の奇跡とも呼ばれた、あの、藤堂鏡士朗が。
「ちょっ・・・! な、何言ってんですか、藤堂さん!」
「ゼロは我々のリーダーだ。そのために出来ることをするのは当然だろう」
「だからって何で腹踊り!? 藤堂さんにそんなことをさせるくらいなら俺がやります!」
「そうです、私もやりますっ!」
朝比奈が必死で思い止めようと説得するが、どちらにせよ彼の腹筋も逞しいものだろうから、描かれる人相はきっと体育会系の男に違いない。自ら立候補した千葉の腹踊りは少し見てみたい気もするが、彼女の場合は腹に絵など描かなくて宜しい。ぎゃあぎゃあと必死に、それでいて懸命に騒ぎ始めた彼らを煽るように、玉城が「よし!」と己の膝を叩いた。
「じゃあ俺は酒を用意するぜ! なーに、ゼロだって飲んで騒げばすぐに元通りになるって!」
「ま、待ってくれ! ゼロもひとりで落ち着いて考えたいから、俺たちに連絡してこないのかもしれないし」
話がどんどんと可笑しな方向に流れ始め、扇が慌てて仲裁に入るが、正論こそがつまらないということも場合によってはあるのだ。だから、えーと、と周囲を和ませる顔立ちで、扇も必死に考える。
「見守って、俺たちは待つべきだと思うんだ」
「そうですね。それではゼロが好みそうなケーキや紅茶、それにフルコースのディナーなどを用意して」
「そうだ。大きなぬいぐるみとか、きっとゼロは好きだと思う。クマとかウサギとかキリンとか」
「ああ、ぬいぐるみに囲まれるゼロ。きっと素晴らしい光景でしょうね・・・!」
恍惚と語るディートハルトはともかく、やはり扇も普通そうに見えて黒の騎士団副指令の肩書きは伊達じゃない。じゃあ早速、とてきぱきと指示を出し始めるのは良いが、任務地は美味しいケーキ屋さんとファンシーショップだ。大きな猫のぬいぐるみを抱えているゼロなんて、ゼロなんて、そんなの素晴らしすぎるじゃないか! 指令を受けた団員たちは、すぐさま責務を果たすべくアジトを発つ。猫耳も良いかもしれない。猫耳仮面ゼロ。新たな黒の騎士団のコスチュームにブリタニアもびっくりだ。
その日、黒の騎士団では延々と会議が行われ、彼らはゼロを如何に慰めるかについて白熱した議論を交わし、朝を迎えたのだった。
そして枢木スザク率いるブリタニア軍の戦艦をすべて沈めると同時に黒の騎士団へと現れたゼロは、猫背ではなく仮面の上からでも分かる爽やかな空気をまとっていた。あの、ゼロ、慰めは、と思わずカレンが問うてみたところ、彼は至極幸福そうに答えたという。
「もう大丈夫だ。ある者たちに癒してもらったからな」
ロロとか会長とかリヴァルとかシャーリーとか。そんな呟きは、団員たちの耳には届かない。つまりゼロがやってきたらぬいぐるみソファーに案内して、ディナーとケーキを山ほど与えて最高級のワインを開けて、藤堂・朝比奈・千葉による宴会芸を披露し、その後は女性陣四人とラブホテルもかくやという急ごしらえだが雰囲気満点の部屋に押し込めて三日ぐらい鍵を閉めておこうという「ゼロ慰め計画」は、陽の目を見ることなくお蔵入りと化してしまったのだ。
その日を境に、ゼロには黒の騎士団以外にも複数の愛人がいるのだと、もっぱらの噂が立ったのだった。
っていうかルルとナナリーが兄妹って分かっていて、ナナリーが皇族総督なんだから、それすなわちカレンへのルル皇族バレになるんじゃなかったの・・・? そこらへんはスルーなんですか? えー!?
2008年5月18日