【「ホーム・スイートホーム」を読むにあたって】

この話は、R2第3話「囚われの学園」のネタバレを含みます。
今回は明るいです。それでも微妙に可笑しいので、どんな話でも大丈夫という方のみご覧下さいませ。
閲覧後の苦情は申し訳ありませんがお受け出来ません。少しでもやばいと思われた方は今すぐお戻り下さいませ。むしろレッツリターン!



▼ 大丈夫です、読みます ▼












































ロロを協力者として迎え入れるにあたり、黒の騎士団では新たな組織図が作られた。
それはロロが条件として望んだものであり、黒の騎士団が許し了承したものだった。





ホーム・スイートホーム





「ゼロ姉さん、そろそろ起きる時間だよ」
中華風の大きな長椅子に身を横たえているゼロに、ロロは華やかな笑みを浮かべながら近づいて腰を下ろす。タオルケット代わりにされているマントの肩を軽く揺すって、んん、と漏らされた吐息に瞳を細めた。緩やかな紫の瞳が開かれていき、それがゆっくりとロロを捉え、愛しいものを見るかのように綻びを帯びる。
「・・・・・・おはよう、ロロ」
「おはよう、ゼロ姉さん。もうすぐご飯だよ」
伸ばされた手に指を絡ませて、力を入れて引っ張り起こす。細い身体は容易く持ち上げられて、そのことにロロは眉を顰め、ゼロは苦笑した。中華連邦総領事館のこの部屋は今は合衆国日本の領土であり、そして黒の騎士団の側近幹部しか出入りできないこともあってゼロは仮面を外し、素顔を曝け出している。少し乱れた黒髪を直す仕草に、ロロは空いたゼロの隣へと腰掛けた。
「今日の夕飯はピザだって」
「・・・・・・またC.Cの我侭か」
「うん。カレン母さんと喧嘩してたよ。C.C父さんが言い負かしてたけど」
その名残なのか、別の椅子に座っているカレンは盛大に眉を顰めており、C.Cは勝ち誇った顔でクーポン券の台紙を大切そうに抱えている。
「だってゼロ! 一昨日はファーストフードのデリバリーで昨日は中華で今日はピザだなんて、そんなカロリーの高い食事ばっかりしてたら身体に悪いに決まってるじゃない!」
「太る、の間違いだろ? おまえのその服はさぞかし三段腹が目立つだろうな」
「うるさい、C.C! あんたこそパイロットスーツがぴちぴちになっても知らないから!」
ふふん、と笑ったC.Cにカレンが噛み付く。外見だけなら同年代の二人が言い争っている様は学校のワンシーンのようで、微笑ましいというよりもむしろ姦しい。父さんと母さんは仲良しだね、と笑うロロに、ゼロは肩を竦めた。
「ねぇゼロ、それにロロ」
「ラクシャータ叔母さん」
キセルを手にやってきたラクシャータに、ロロが顔を上げる。ルージュの塗られた唇をにっこりと吊り上げて、ラクシャータはロロに微笑みかけた。そしてやおら彼のこめかみに両手を押し当てたかと思うと、ぐりぐりぐりぐりと拳で締め付ける。
「ラクシャータおねーさん、って何度言ったら分かるのかしらぁ?」
「いたっ! 痛い、痛いです! ごめんなさい、ラクシャータおねーさん!」
「そう。いい子ね、ロロ」
よしよし、と頭を撫でて褒めてやればロロも照れたように頬を染め、ゼロに優しく見守られているのが恥ずかしいのか、少しだけ顔を俯けた。ねぇゼロ、とラクシャータが話を振る。
「ヴィンセントをねぇ、ちょーっとばらして新ガウェインの参考にしたんだけど、駄目?」
「俺は構わないが、あれはロロの機体だ。ロロ、どうする?」
「えっと、僕は構わないけれど」
でも、その、と続けられた歯切れの悪い言葉に、ゼロとラクシャータは顔を見合わせてロロを向く。白い頬が徐々に朱に染まっていって、可愛いわねぇ、とラクシャータが愛でるように呟いた。意を決したのか、ロロが顔を上げる。
「ヴィンセントは、あげます。藤堂伯父さんにでも、C.C父さんにでも」
「そうしたら、おまえはどうするんだ?」
「僕は、その・・・・・・」
再び真っ赤になって俯いたロロが、ちらりとゼロを垣間見る。それに気づいたラクシャータが、目を猫のように細めてゼロを肘で突いた。
「やぁだ! 可愛い弟君は、ゼロお姉さんとガウェインでタンデムしたいんだってさ!」
「ラ、ラクシャータ叔母さん!」
「おねーさんだって言ってんでしょ、あぁん?」
「ラ、ラクシャータ、おねーさん・・・・・・」
じろりと凄まれてロロが圧される。ゼロは予想外の要望に目を瞬いていたが、不思議そうにロロを見やった。視線があって、ぱっとロロが赤くなる。可愛い可愛い、とその頭をぐりぐりと撫でて、ラクシャータは鼻歌を歌いながらラボへと戻っていった。残っているのは長椅子の上で向かい合う少年二人と、離れた場所でウェストの細さを測り競い合っている少女二人のみ。
「ロロ、おまえ、俺とガウェインに乗りたいのか?」
「・・・・・・うん。ゼロ姉さんが許してくれれば、だけど」
「許すも許さないも、おまえのパイロットとしての実力は十分に認めている。だが・・・・・・」
言葉を途切れさせたゼロの手を、反射的にロロは握った。指の細い手は操縦桿を握るものではなく、指揮者としての采配を振るうそれだ。ウェストは少女二人よりも間違いなくゼロが一番細いだろうと思いながら、ロロは必死に言い募る。
「絶対に裏切らない。ゼロ姉さんを、必ず守るよ。絶対に、誰にもゼロ姉さんを傷つけさせない」
「ロロ」
「もちろんブリタニアの『白い死神』とか何とか言われているランスロットも、僕が破壊してみせる。ゼロ姉さんとの婚約を破棄して他の女に走りやがった枢木スザクなんか、ちゃんと殺してみせるから」
「・・・・・・前々から思っていたんだが、何でスザクはそんな設定なんだ」
「だってぴったりでしょう? ちなみに扇さんは隣に住む浪人生で、ヴィレッタ先生はその恋人のミス・キャンパス。星刻さんは僕たちの家庭教師だよ」
「ディートハルトは?」
「ゼロ姉さんのストーカー」
「・・・・・・言い得て妙だな」
ゼロが深い溜息を吐き出すのを、ロロがじっと見守る。それが許しを請うようなペットの眼差しに見えてしまい、ゼロは小さく苦笑を浮かべた。よしよし、と頭を撫でそうになってしまい、それでは動物扱いだからと考え、代わりにまだあどけない輪郭を残す頬をそっと撫ぜてやる。
「分かった。俺の命はおまえに預けるよ」
「ゼロ姉さん」
「だから必ず守ってくれ。ロロ―――俺の大切な、弟」
「うんっ!」
全部壊してみせるよ、と喜びを全身であらわにして抱きついてくるロロに、ゼロは密やかに少しばかり息を吐き出した。飯事に近いこの擬似的な家族をロロが望んでいるのなら、いくらでも演じ続けてやろう。何故男の自分が姉というポジションなのかは甚だ疑問だが、まぁ良い。母とか祖母でなかっただけましだ。そんなことを考えながら抱き返してやれば、ロロはより一層嬉しそうにゼロに縋りつく。愛らしい弟にゼロは笑った。
少し離れた椅子では、夫婦設定のC.Cとカレンが、巻尺を取り出して胸のサイズについて激しく口論を交し合っている。





家族というロロの願い、黒の騎士団が叶えましょう。ちなみにゼロは義理の姉です(笑)
2008年4月21日