[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。






後に「アリエスの悲劇」と言われるようになるマリアンヌ皇妃殺害事件において、ルルーシュは不可解な点があることを認めていた。自らの母親が殺され、妹ナナリーまでもが傷を負った。思い出すのも忌まわしいあの夜。返せば、不可解な点が多かった。皇帝の住まいである宮殿に、やすやすとテロリストが入り込めたこと。多くの人がいた中で、銃弾は母の周囲にだけ降りかかったたこと。これらは母を殺したがっている他の皇族の手引きということで説明がつく。しかし、問題はまだあった。
どうして母は、ナナリーを抱き締めてその場に伏したのだろう。女性ながらにナイトメアフレームのパイロットを務めた経歴を持つのだから、戦場における行動は軍人のそれだっただろうに。どうして物陰に隠れもせず、その身を晒し続けたのだろう。
そして最も不可解なのは、あの夜だけ何故か、アリエスの離宮を守る衛兵の数が少なかったことだ。確かに母は庶民の出だったが、皇妃として最低限の衛兵は遣わされていた。それより少なかったあの夜の衛兵の数を知ったとき、ルルーシュは愕然とした。世界はすべてひっくり返った。
あの夜、衛兵を配置したのは、他ならぬ母だったから。



己の命を使ってまで、母は何をしたかったのだろう。衛兵の数を減らし、ナナリーを守った振りをしながら傷を負わせ、ルルーシュをただ一人五体満足に遺し、彼女は一体何がしたかったのだろう。そこに愛はあったのだろうか。息子と娘に対する、慈しみはあったのだろうか。アリエスの離宮でいつも浮かべられていた優しい笑顔は、果たして本物だったのだろうか。
分からない。ただ、悲しかった。母の死を前に、こんなことを考えなくてはならない自分が悲しかった。いっそ死にたいと考え、それではナナリーが一人になると思い、そう憂慮するように育てられたことさえ母の計画の一部だったのかもしれないと思うと、どうしようもなく泣けてきた。父の恫喝が思い出させる。本当に自分は与えられてばかりで、こうして利用されるのも当然だと、ルルーシュは歪に笑った。
さて、これからどうしよう。母の不可解な行動を、父の基本理念を知ってしまった今、どちらの意に沿うようにも生きられない。生きたくない。ナナリーすらどうでもいいと、そんな考えが浮かんでしまう。



・・・・・・世界が見たいな。
ルルーシュはぼんやりと、そんなことを思った。





下位に置かれた






(これで日本でカレンと出会って姉弟みたいに育っても良い。)



2007年8月1日