【 「プレゼントは赤いリボンで」を読むにあたって 】
この話は完結していません。続きを書く可能性も限りなく低いです。貧乏性によりアップ致しました。
枢木スザクの周囲の人間がばったばったと何者かに殺されて(死んで)いく、とても趣味の悪い話です。しかもルルーシュ(ゼロ)は大切な存在すべてに拒まれ、すでに死んでいます。
ですので、そういった話が許せない方、好みでない方は決してご覧にならないで下さい。
閲覧後の苦情は申し訳ありませんがお受け出来ません。少しでもやばいと思われた方は今すぐお戻り下さいませ。むしろレッツリターン!
▼ 大丈夫です、読みます ▼
プレゼントは赤いリボンで
【 case1.セシル・クルーミー 】
10年待ちました。もう待てません。今からあなたのところへ伺います。
すべては突然に始まった。今はユーフェミアの騎士ではなく、ブリタニア皇帝シュナイゼルの近衛として働いているスザクの元に、一本の電話がかかってきたのだ。それは最近会っていなかった、かつての上司からのものだった。
「・・・・・・え? ロイドさん、今、何て」
スザクが聞き返すと、相手は常からは想像も出来ない、低くかすれた声で同じ内容を告げた。
『―――セシル君が、死んだよ』
それはスザクにとって、姉にも等しい人物の訃報だった。
セシル・クルーミー。今年で34歳になるはずだった彼女は、ブリタニア軍特派に所属する軍人であり科学者だった。藍色の髪と優しい笑顔、そして時折上司をも唸らせる腕力と独創的な料理の腕を持つ、穏やかで人当たりの良い女性だった。彼女はスザクが特派に配属されたときから姉のように温かく、時に親身になって相談に乗ってくれた相手だった。部署が離れた今でも年に数回会い、他愛ない話をする仲だった。そんなセシルが死んだ。
正確に言えば、殺された。
「一昨日の晩、自宅マンションに帰宅したところ、待ち受けていた何者かに刺される」
提出された書類に、シュナイゼルはざっと目を通して要点だけを口にする。皇帝の執務室であるそこには彼とスザク、そして報告に来たロイドだけしかいなかった。昨夜電話をよこしてきたロイドはいつもと同じ白衣をまとっているが、アイスブルーの瞳の下には色濃い隈が刻まれている。一晩や二晩の徹夜くらいは何ともない彼にも、よほど堪えたのだろう。それでもへらりと笑みを浮かべる様は滑稽で、むしろ痛々しくさえ感じさせた。
「昨日、出勤時間に来ないから電話してみたんですよ。セシル君に限って無断欠勤なんてあり得ないから、何かあったのかと思って管理人さんに部屋に行ってもらったら、鍵が開いてて」
「すでに死んでいた、と」
「その通りですー」
「それだけなら私のところに報告に来ないだろう? 何があった?」
「手紙が、置いてありまして。違うなぁ、置いてあったんじゃなくて、書いてあったんです。セシル君の家の壁に」
ロイドの笑みが歪む。
「セシル君の、血で」
息を呑んだスザクに、シュナイゼルから読み終えた書類が回される。そこにはセシルが殺されたと経緯と思われるものが、現場から推測される限り書かれていた。
司法解剖から見て、殺害は一昨日の22時から23時の間。直接の死因は刺殺。肺まで到達していたナイフの一撃で、おそらく即死だったと思われる。現場となったリビングの壁の絵画が下ろされ、代わりにセシルの血で文字が描かれていた。その血液は死後、彼女から抽出されたもの。
「『10年待ちました。もう待てません。今からあなたのところへ伺います。』」
スザクとロイドの声が重なる。書類を持つ手に力がこもる。10年前に起きた出来事といえば。
「ゼロ、か」
シュナイゼルの呟きに、スザクの肩が震える。書類がかさりと音を立てたけれども、他の二人は振り返りもしない。速くなっていく鼓動をスザクは必死に抑える。落ち着け、と自らに言い聞かす。
「だけどセシル君は特派で僕の助手をやってただけですよぉ? 恨まれるとは思えませんけど」
「ランスロットに関わっていたのは事実だろう? 日本人にとってランスロットはまだ敵という印象が強い」
「『今からあなたのところへ伺います。』って、これ変ですよねぇ。セシル君を殺した後に書いたってことは」
「『今から伺う』のは彼女ではない。本当に殺したい相手は別にいるということ」
シュナイゼルが出した結論に、ロイドも頷く。ペンを拾い上げ、シュナイゼルは手元の紙に走らせる。
「10年前、セシル・クルーミーの周囲で起こった出来事をすべて洗え。特にゼロの件を重点的に」
「はぁい」
「私はゼロの件に関わった人間に注意を促そう。この事件は極秘とし、全権をロイド・アスブルンドに預ける。枢木少将」
「・・・・・・はい」
「ロイドに協力し、速やかに動機の把握、犯人確保に務めよ」
「Yes, Your Majesty」
敬礼し、スザクは膝を着く。手の中の書類はまだ小さな音を立てており、スザクの心を如実に表していた。
けれどセシル・クルーミーの死は、すべての始まりでしかなかったのだ。
(ロイドさん、私がいなくてもちゃんと仕事をして下さいね。スザク君も身体に気をつけて。)
【 case2.藤堂鏡志朗 】
あなたは何をしてるのですか。一体何をしてるのですか。
現場となったセシルのマンションを見てみようと向かっている最中、助手席のロイドの携帯電話がメロディを鳴らした。書類を眺めていたロイドは不機嫌そうに画面を見るが、すぐに電話に出た。スピーカーボタンを押してドリンクコーナーに置くということは、運転しているスザクにも聞かせるつもりなのだろう。届いた声は、先ほど別れたばかりのシュナイゼルだった。
「どうかなさいましたかぁ、陛下」
『一足遅かった。ゼロに関わった人物の安否を確認していたところ、昨日一人殺されていた』
「誰です?」
『日本人だ。藤堂鏡志朗』
嘘だ、とスザクは無意識のうちに呟いた。ハンドルを握る手が震え、ロイドが脇に寄せるよう促す。ハザードランプを点し、スザクは道路の隅へと車を止めた。
『死亡時刻はブリタニア時間で昨日の15時から16時の間。第一発見者は四聖剣の朝比奈』
「待って、下さい。藤堂さんは武術の達人です。そんな簡単に殺されるはずが」
『抵抗した跡はなかったらしい。日本刀のようなもので背中を斜めに切り裂かれている』
「そんな」
『四聖剣の話だと、彼は客人が来るのを待っていたらしい。思い返せばやけに静かな様子だったと千葉が語っている』
「ってことは、殺したのは知り合いってことですかぁ」
『客人と会った後で別の人間に殺されたという可能性もある』
「でも抵抗もないってことは、覚悟を決めてたってことでしょう? やっぱり知人ですよぉ。でもって、ゼロの関係者」
びくりと、今度こそはっきりとスザクの肩が跳ねた。見開いた瞳でロイドを見るが、彼はかなり嫌悪感を示していて、その顔は酷く歪んでいる。
『だが、藤堂が殺されたとなると反ブリタニア勢力の仕業とは考え辛い。むしろ藤堂は日本解放の立役者の一人だ』
「じゃあ日本とブリタニアの両方を恨んでる人じゃないですかぁ? 例えばゼロに親しい人間とか」
ナナリー殿下はどうなんです、とロイドが聞き返すのに、スザクは思わずハンドルを叩いた。
「ナナリーに人殺しなんて出来ません! ただでさえ彼女は足と目が悪いのに!」
「そんなの見せ掛けかもしれないよぉ? 実は治ってて、兄の復讐に走ってるとか」
「ロイドさん!」
『ナナリーの所在は確認している。一昨日も昨日もブリタニア宮殿におり、共に食事をしたとユーフェミアが言っていた』
「なぁんだ」
『藤堂の現場に残っていたメッセージも、やはり彼の血で書かれていたらしい。内容は「あなたは何をしてるのですか。一体何をしてるのですか。」』
ロイドが書類の裏にペンを走らせる。右肩上がりの文字で書かれた文を繰り返し、彼はふぅんと一つ唸った。
「やっぱり誰かに宛てたメッセージみたいですねぇ。何をしているのですか、か。相手の行動が分からないとか?」
『もしくは責めているのかもしれない。おまえはどうしてそんなことをしているのか、もっと他にやることがあるんじゃないか、と』
「あぁ、なるほどぉ!」
『とにかく人種に関係なく殺人は起きている。四聖剣は犯人を必ず探し出すと言っているから、彼らが乱暴な手段に訴える前に片を着けてくれ』
「努力しまぁす」
ロイドがやる気のない声で答えると、シュナイゼルは通話を切った。携帯を拾ってポケットに戻し、ロイドは茫然としているスザクを振り返る。
「枢木少将、君、確かに殺したんだよね? ゼロをさぁ」
「・・・・・・殺しましたよ」
ハンドルをきつく握りしめ、スザクは奥歯をかみしめて過去を吐露する。
「ルルーシュは、俺がこの手で殺しました。10年、前に」
(俺たちは間違っていたのかもしれない。ゼロ、おまえの意見を仰ぎたくなるなんて、そんな資格はないというのに。)
【 case3.ミレイ・アッシュフォード 】
裏切り者。
10年前、ブリタニア皇帝が倒れ、シュナイゼルがその跡を継ぐ切欠となった事件。それが当時のエリア11におけるテロリストの犯行、通称「ゼロ事件」と呼ばれるものだった。ブリタニア皇帝の実子であったルルーシュ・ヴィ・ブリタニアがゼロを名乗り、エリア11にてテロ組織「黒の騎士団」を立ち上げ、ブリタニアの崩壊を目指して立ち上がったというのがその事件の全貌である。しかし彼らはブリタニア軍の前に多くの者が倒れ、ゼロ本人も前ブリタニア皇帝を殺害した後、ブリタニア軍人によって射殺された。
その軍人が、スザクだった。彼はその手でゼロを、友人だったルルーシュを殺した。それが10年前の話。
捜査はまず、ゼロの、ルルーシュと親しかったという人物を中心に行われた。彼を殺されて恨みを抱いた人物。最も疑われたのはやはり妹であるナナリーだったけれども、彼女のアリバイはユーフェミアと、ブリタニア宮殿の多数のメイドや執事が証言した。
次に疑われたのは黒の騎士団でゼロの親衛隊を務めていたカレンだったが、彼女は10年前の戦いの最後の最後でゼロではなくユーフェミアの平和への主張に則って動いた。スザクが連絡を入れると彼女はしばらく黙り込み、「じゃあ次は私かもしれないわね」と笑った。彼女は今は母親と日本で静かに暮らしており、アリバイも怪しいものではなかった。
しかし、スザクとロイドが調べているうちに、第三の殺人が起こった。殺されたのは、ミレイ・アッシュフォード。正確に言えば彼女は自ら命を絶っており、壁には生きていたときに切断されたと思われる指で、彼女自ら文字を綴っていた。たった、一言。
裏切り者、と。
「何でだよっ! 何で彼女が死ななきゃいけないんだよ!」
どん、と壁が叩かれる。リヴァルの叫びにスザクはうつむき、眉を顰める。ミレイは結婚を控えていた。高校時代から彼女に想いを寄せていたリヴァルと、アッシュフォード家もようやく認め、二週間後に式を挙げる予定だった。
「裏切り者って何だよ! 彼女が何を裏切った! そんな人じゃないっ!」
「リヴァル・・・・・・」
「会長は、ミレイはそんな人じゃない! スザク、おまえだってそう思うだろ!?」
涙でぐちゃぐちゃの顔を向けられ、スザクは首を縦に振る。ミレイという人間は器が大きく、誰に対しても気遣いと笑顔を向けるような人だった。そんな彼女が殺された。違う、死を選んだ。自ら指を切断して文字を書き、その後、出血多量により命を落とした。気になるのは、ただ一つ。
ミレイの死に顔はとても穏やかなものだった。青ざめた唇を綻ばせ、彼女は最期まで微笑んでいた。
「殺してやる・・・・・・っ!」
スザクははっと顔を上げる。リヴァルはきつく己の拳と、眼前の壁を睨み付けていた。
「殺してやる! ミレイを殺した奴を、必ずこの手で殺してやるっ!」
駄目だ、とスザクは言おうとしたけれども、リヴァルの横顔にそれも出来なかった。ミレイは自殺だったため苛立ちを誰にぶつければいいのかも分からない。病院から去る際、ロイドが振り向いてリヴァルを見やり、肩をすくめた。
「彼に監視でもつけといた方が良さそうだねぇ。復讐に走る人間は何をするか分からないから」
一時は婚約者だったミレイの死を、彼はたいして偲んでいないようだった。
(ごめんね、リヴァル。あなたのことを好きになりたかった。なれると思ってた。だけど、やっぱり私。)
2007年4月20日▼
以上三話で『プレゼントは赤いリボンで』は終了です。半端な話にお付き合い下さりありがとうございました!
殺していっている人物は一応決めております。C.Cではなく、ルルーシュとC.Cとの間に出来た子供(C.Cと同じく異能持ち)です。在り得ない設定で申し訳ありません・・・。
スザクの周囲の人間を全員殺し、最後にはスザクの前に姿を現して、彼に絶望を突きつける話になる予定でした。
ルルーシュがすべてに拒絶されて孤独に死ぬのなら、スザクはすべてを殺されて孤独に生きる。そういった意味で真逆を目指していた、筈。
しかし全キャラ殺していくのが流石に無理でした・・・。
本当に中途半端で申し訳ありません。お付き合い下さりありがとうございました!