花は棘を持っている





濃紺のスカートがふわりと舞い上がり、いつもは秘されているその奥を覗かせる。けれども白い太腿を知覚させるよりも早く、ストラップのついたパンプスが相手の脳天を直撃した。崩れ落ちる男を踏み台にして、小柄な身体が跳躍する。繰り出されたナイフをエプロンで絡め取り、二撃、三撃。あっという間に襲撃者は地へと這い蹲り、降り立ったのは一人の女性。彼女は乱れたスカートの裾を直し、穏やかに微笑んだ。
「お怪我は御座いませんか、ナナリー様」
「はい。ありがとうございます、咲世子さん」
「いいえ、主を守るのが騎士のお役目ですから」
エプロンを拾い上げ、その中からナイフを取り出す。他にも転がっている幾つかの銃を拾い上げ、エプロンを風呂敷代わりにしてまとめる。いつものように車椅子に座っていたナナリーも、握っていた小さな拳銃をスカートの内に戻した。
「この者たちの処分はどうなさいますか?」
「いつものようにお願いします。きっとお兄様を狙ってきた方でしょうから」
「ルルーシュ様も賭けチェスを少しは控えて下されば宜しいのに。貴族の中にはマリアンヌ様のお顔を知っている者もいるのですし」
「いいんです。チェスはお兄様にとって気を抜くことの出来る数少ない遊びの一つですもの。咲世子さんには申し訳ないですけど」
「いいえ、私はナナリー様にお仕えしているんですから。どうか気になさらないで下さい」
それに腕が鈍らなくて丁度良いです。咲世子はそう言って笑い、手際よく男たちを拘束すると、クラブハウスの食料庫となっている地下室への扉を開ける。この奥にはアッシュフォード学園の地下へと繋がる入り口がある。それは咲世子だけでなく、ルルーシュも外出の際に多用していた。簡単なセキュリティチェックさえ突破すれば、学園下を縦横無尽に走る地下施設に入ることが出来、その中の薄暗い一角を咲世子は勝手に使用していた。主に拷問と死体遺棄のために。
襲撃者たちを食料庫に押し込み、意識が戻らないよう催眠ガスを噴射する。ドアを閉めて外から鍵をかけ、咲世子は振り向いた。にこりと微笑みかけてくるナナリーの元に近づき、両膝を着いてその手を取る。
「ありがとうございます、咲世子さん」
「当然のことです、ナナリー様」
穏やかな空気の中、彼女たちは何度目かの誓いを立てる。

「いつまでも共に、私の騎士様」
「Yes, your highness」

咲世子はそっと手の甲に口付けを落とし、ナナリーはその手でゆっくりと彼女の頬を撫でた。軽やかな笑い声が、午後のクラブハウスに広がった。





ナナリーの騎士は咲世子さんでいいと思います。
2007年2月25日