02.春





三月後半、南イタリアから北イタリアへと順番に春は訪れる。まだ肌寒い日はあるけれど、それでも絢爛に咲く花々にはどうしたって目を奪われてしまう。格好いいなぁ、彼女いるのかなぁ、そう思う男の子が出来たのもこの季節だった。同じ学校で、別のクラスの彼。深い鼈甲の様な色の髪に、透き通った青い瞳。声は低く甘くて、廊下ですれ違うだけなのに胸がどきどきと高鳴った。新しく選んだ服は春色のワンピース。少しだけ背伸びしてヒールの高いブーツを履いた。初めて本格的な化粧品を買いに行って、慣れないメイクに四苦八苦する。くるりとカールした睫毛の先を、春風が優しく撫でていった。告白しちゃいなよ、と友達に脇腹を突かれて、ええ、と頬を熱くして戸惑いながらも挨拶から始めた。チャオ。自分のイタリア語はこんなにも発音が悪かったのかと少しばかり落ち込みながら、チャオ、と返してもらえた笑顔に恋をした春。





目で追っちゃうの。好き。呟いたら気持ちがもっと大きくなった。
2011年7月24日