02.予測されるべき未来、彼の甘さ
しまった、と瞬時に思ってしまった自分に気づき、綱吉は唇を噛む。何、と戸惑う時期はもう過ぎてしまった。六道骸、ヴァリアー、そして白蘭。経てきた闘いと首から下げているボンゴレリング、何より死ぬ気の炎と超直感が綱吉に「おまえはもう戻れない」と告げている。けれど綱吉にはまだ、自分がマフィアになるという決意をすることが出来なかった。誰かを傷つけるのが恐ろしい。殺すなんてもっての外だ。守るために拳を握ることはするけれど、出来れば対話で解決したいと常に思っている。弱虫と言われてもいい。それでも暴力だけは好き好んで使いたくなかった。
ぐるりと一瞬で周囲を囲んだ黒いスーツの男たち。そう見たことがあるわけではないけれども、自分を「ボンゴレ十代目」と呼んだ時点でマフィア関係者であることは明らかだ。そして味方ではないことも。意識の奥が警鐘を鳴らす。]グローブはリボーンに言われて、制服のズボンにくくりつけてある。この愛用の武器は身に着ける手間がかかるのが唯一の難点だと綱吉は思う。鞄を手放して、グローブを嵌めるまでの時間、敵が待ってくれるだろうか。否、間は持たせなくてはならない。だって今の自分の後ろには、クラスメイトの女の子がいるのだから。
「え、何?」
きょとんとした顔をしているは、マフィアなんて関係のない普通のクラスメイトだ。バドミントン部に所属していて、クラスの中だとさっぱりした性格で男子にも結構人気がある。だけど彼女は普通の女の子だ。京子ともハルとも違い、綱吉に近しい友人ではない。交流だって、日直ということで今日が一番話したくらい。何の関係もない、ただの女の子だ。それなのに巻き込んでしまった。
男たちの数は、ゆうに百を超えているだろう。それでも周囲の家から不審な声が上がらないということは、幻術でも仕掛けられているのかもしれない。公園で遊んでいるはずの子供の声が聞こえなくなっていることが、より一層綱吉に確信を与えた。ならば逆に気にしてやることはない。
「、下がって」
「沢田君?」
「君は俺が守るから」
ふつふつと身体の内から湧き上がってくるのは炎だ。XANXUSではないが、憤怒かもしれない。その一方で思考回路は冷静さを帯びて回り始める。鞄をアスファルトへと落とし、綱吉はベルトから]グローブを引きちぎるように解放した。目の前の男がスーツの内側から銃を取り出すのと、綱吉の額に炎がともるのは同時だった。何これ、との呟く声が聞こえる。
何、これ? え、何?
2011年7月3日