05.少女の夜
週に二日、は塾に通っている。部活が終わったら一度家に帰って、用意された夕飯を食べてダッシュで自転車に跨る。始まるのは十九時からで、途中に休憩をはさんで火曜日は英語、木曜日は数学を二時間ずつだ。来年にもなれば受験生になって、もっと火曜日数も増えるのだろう。成績は悪くはないけど良くもない。今のところ進みたい高校が決まっているわけではないにとって、勉強は少しばかり面倒くさい義務だった。
「ただいまー」
「おかえりなさい」
「お腹減ったー。お母さん、何かない? カロリー低いの」
「ゼリーならあるわよ」
「やった、ありがと!」
「それ食べたらお風呂に入っちゃいなさい」
「はーい」
冷蔵庫からオレンジ入りのゼリーを取り出して包装を剥がす。スプーンを差し入れれば瑞々しい感触があった。何か飲む、と聞いてくれる母親に緑茶をお願いして、ダイニングの椅子に座ってその日あった面白かったことなどを話す。企業戦士である父親の帰りは毎晩十時過ぎだ。が風呂から出てくればリビングのソファーで寛いでいる背中があり、父親は振り向いて猫なで声を出してくる。
「、父さんの肩を揉んでくれないか?」
「えー」
「お小遣いやるから」
「仕方ないなぁ。じゃあ今度の土曜日に映画観に行くから、その分ちょうだい?」
「五分間、肩を揉んでくれたらな」
甘い父親とちゃっかり者の娘に母親が苦笑する。塾がある日は夜も遅くなるので、見たいドラマはすべて録画しておく。翌日にそれを見るのがの楽しみだ。おやすみ、と挨拶して自室へと引き上げる。それから少し漫画を読んだり、申し訳程度に明日の学校の準備をしたりして、そして眠気が襲ってきた頃に部屋の電気を消してベッドにもぐる。遅刻だけは出来ないから、目覚まし時計をセットするのを忘れずに。
こうしての一日は終わる。
明日も同じ毎日が来るって、信じて疑いもしなかった。
2011年7月3日