03.少女の昼
並盛中は公立にもかかわらず、昼は給食ではなく各自持参を基本としている。校内に売店はないので、大抵の生徒が弁当を持ってきていて、それ以外でも登校途中のコンビニで買ったパンなどを食べているのがほとんどだ。もいつもと同じように、三人の友達と机をくっつけて鞄から弁当を取り出す。可愛らしいお弁当箱には冷凍食品も少しだけ入っているけれど、基本的には昨日の夕飯と同じメニューだ。お母さん手抜き、とは不貞腐れるけれども、どこの家も同じようで、向かいに座る友達が「うちは全部冷食だよー」と笑いながら言ってきた。飲み物は水筒だったりペットボトルだったりと個人様々だが、女子は弁当ついでに小さなデザートがついてくるのがお約束。
「あ、クッキー。美味そうだなぁ」
「山本君。一枚食べる?」
「いいのか? サンキュー!」
小さなクッキーが詰まった袋を開いておしゃべりに興じていたところ、背中からかけられた声。明るいそれにが首をめぐらせて進めれば、クラスでも人気者の男子生徒は爽やかな笑顔で礼を言った。肩越しに伸びてきた手がクッキーを二枚攫って消えていく。ありがとな、とこれまた爽やかに再度告げてから、山本は友人である綱吉や隼人の元へと向かっていく。中学二年生にしては背の高い、がっしりとしたスポーツマンの背中ををはじめとした四人の女の子たちは見送った。彼の姿が見えなくなったところで、きゃあっと黄色い声を小さく上げる。
「山本君、やっぱり格好いいね」
「いいよねー。彼女いないんだっけ?」
「C組の小林さん、山本君のこと好きなんだって」
「ああ、バレー部の? そうなんだー」
「野球部、今年の大会もいいとこまで行ったしね」
恋愛の意味での本気ではないけれど、見目が良くて人気の高い男と関われば、それを嬉しく感じるのは女の性だ。それからしばらくは誰それが誰それのことを好き、なんていう中学生らしい話題で盛り上がる。文化部よりも運動部所属の男子に目が行くのは、たち自身が運動部に所属しているからか。そうでなくともこの年代は、スポーツの出来る男子が所謂「格好いい」と認識されることが多いのだ。
うちの学校って運動部が強いんだよね。もちろんうちらバドミントン部だって負けないし!
2011年7月3日