最近では三日に一度の割合で挨拶できるようになった日番谷君。
彼の想いがちゃんへと伝わる日は果たして来るのでしょうか。
日番谷君のライバル事情
その日はとても穏やかなお天気の日でした。
蝶々がヒラヒラと逃げ出したり、歓声だか叫び声だかは遠くまで響き渡ったり。
そんな朗らかな日に、十番隊の隊長さんと副隊長さんは執務室でデスクワークをしています。
虚でも出ればいいのに、ととんでもないことを考えながら日番谷君は書類に筆を走らせて。
けれどそんな仕事も乱菊さんの一言で終わりを告げてしまいました。
「隊長」
「何だよ。無駄口叩いてねぇで仕事しろ」
日番谷君、部下に優しくありません。
けれどそんなことには慣れっこなのか、乱菊さんは窓から下を見下ろしたまま続けました。
「今ちょうど下の通路にがいるんだけどねぇ・・・」
日番谷君、ご休憩モードに突入です。
青空に白い雲がふわふわと浮いています。
ときどき吹いてくる風も爽やかで気持ち良くて。
そんな精霊廷の中庭にちゃんは立っていました。
男の子と、二人で。
日番谷君の眉間に皺が走ります。
その顔はとてもとても不機嫌になって。
乱菊さん以外の十番隊隊員さんたちは、上司の休憩モードを良いことにさっさと執務室から退散していきました。
みなさん賢い判断です。
「・・・誰だ、アレ」
お子様なくせにやけに低い日番谷君の声が響きます。
少し考えるように首を傾げてから、乱菊さんが答えました。
「四番隊の山田花太郎、だったかしら」
覚えやすいような覚えにくいような名前だったのよね、という一言までついて。
日番谷君はその名前を天才の脳みそに深く刻みながら、中庭を見下ろします。
いつもどおり無表情なちゃんと、ちょっと頼りなさそうな感じの花太郎君と。
二人は何故か普通に会話しています。
日番谷君はさらに眉間に皺を寄せました。
やわらかな風が二人の話し声を運んできます。
「こ、こんにちは、さん」
「こんにちは、山田君」
「あの、先日は最中をどうもありがとうございました。すごく美味しかったです」
「こちらこそ四番隊の迅速な治療に助かりました。どうもありがとうございました」
「いえそんな、それが僕達の仕事ですから」
そういえば先日三番隊では虚によって傷を負った死神がいたらしいな、と日番谷君は思い出します。
もしその死神がちゃんだったら、それは間違いなく自分の耳に入るだろう。
だからきっとちゃんではない。でもって惜しいことに市丸でも吉良でもない。
日番谷君は隊長らしくもなくそんなことを考えています。
そこまで三番隊がお嫌いですか・・・。
しかしちゃんだけは例外なようで。
まったく恋は盲目です。
「あ、あの、これ」
「?」
「うちの隊で世話をしているヒマワリなんです。奇麗に咲いたから、もしよければどうぞ」
「奇麗ですね」
「はい!・・・・・・さんに、似合うと思って」
日番谷君のこめかみに青筋が浮かびます。
「では有り難く頂戴します」
「はい!このまま花瓶に生けてもらえれば数日は持ちますから」
「種はお返しした方がいいですか?」
「あ、じゃあその種でまた来年花が咲いたら、またさんに持っていきますね」
「ありがとうございます」
やっぱり無表情なちゃんと、照れたような花太郎君。
「侮れないわ・・・」
乱菊さんが呟きました。
護廷十三部隊の中では戦闘力も低く、お荷物と言われかねない四番隊。
まさかそんなところに伏兵がいたなんて。
チラッと隣を見れば、そこにはすでに自分の上司である日番谷君の姿はなくて。
下の方でトンッという軽い音。
見てみればまぁ見事なほどに予想された事態。
やっぱり無表情なちゃんと、突然の十番隊隊長の登場に顔色を変える花太郎君と。
とてもとても怒りを秘めている日番谷君。
可哀想に、と乱菊さんは思いました。
ライバル登場で日番谷君の恋が少しは進展すればいいけれど。
どうなるかはすべて、日番谷君の第一歩にかかっているのです。
・・・・・・・・・でもやっぱりきっと。
ヒマワリの花束を抱えているちゃんを可愛いと思ってしまった時点で、進歩はみとめられないのでしょうねぇ。
2003年10月1日(2004年4月20日再アップ)