やっぱり少し、寂しいね。





八月の終わり、最後の練習日。
脱いだウェアを鞄に突っ込む。その上からレガースとスパイク、それとタオル。
置きっぱなしだった雑誌も持って帰んなきゃ。やべ、俺の何号だったっけ?
「あー・・・・・・それにしても、ついに引退かぁ」
隣で俺と同じく荷物整理してた奴が、すげぇしみじみと呟いた。
「長いようであっという間だったよな」
「今年なんか都大会ベスト8だぜ? 一年のときからは考えられないって」
「一年のときはリーグ戦も突破できなかったもんなぁ」
手を動かす傍らで、みんな喋りだす。そうだよな、まさか俺らが都のベスト8に入れるなんて、誰も考えていなかっただろ。
あの二人が、入学してくるまでは。
「・・・・・・俺、最初、マネジなんかいらねぇって思ってた」
誰かがそう言ったけど、たぶんそれは俺らみんなが思ってた。今更だから言えるけど。
「女にサッカーのことが分かるかって思った」
「実際にプレーも出来ないくせに、偉そうにとは思った」
「言うだけなら簡単だって何度も思った」
・・・・・・・・・でも。
「適確、だったよな」
「立てた対策、めちゃくちゃ当たったよな」
「でなきゃ顧問もサッカー経験者じゃないうちの部が、ベスト8になんか残れないって」
「タオルもドリンクも用意してくれなかったけどさ、よその偵察とかめちゃくちゃしてくれて」
「すげぇよな、女なのに」
「うん、すげぇ」
いつの間にか、俺ら全員が認めてた。俺らにとってのマネジはタオルもドリンクも用意しない、ビデオカメラとファイルを両手に持つあいつなんだって。
認めてたから、フォーメーションだっていくつも覚えた。ベンチから飛ばされる指示を素直に受け入れた。
だからこそ俺たちは今年、ベスト8まで残れた。
「杉原もさぁ、最初細くて」
「今でも細いけどな」
「でもあいつ、入部したばっかでもパスとシュートはすごかったよな」
「部活の後も一人で練習してたもんな」
「選抜に選ばれてホントよかったよ」
「頑張ってるもんな、あいつ」
新入部員の中でも、一番ひょろっとしてた杉原。まさかあいつがここまでやるなんて、誰も考えていなかった。
それでも高縄中をベスト8まで導いたのは、間違いなく杉原とマネジで。
山の中から埋もれていた雑誌を見つけ、鞄にしまおうとして止める。これを入れたら、俺の物はもう全部なくなる。
「・・・・・・もっと、ここでやりたかったなぁ・・・」
誰のか分からない呟きが部室に響いた。

のろのろと支度も終えて、もうやることもなくなって、俺たちはのろのろと部室を出た。
途端に拍手がわき起こる。慌てて顔を上げれば、二年と一年のサッカー部のやつらが校庭に集まってた。
そいつらが拍手してる中で、二年の一部が俺たちの方に進み出てくる。その手の中には、花束。
「先輩たち、今までどうもありがとうございました」
「これからも遊びに来て下さいね。みんなで待ってますから」
ありがとうございました。そう言って、花束が俺たちに渡される。俺にはマネジが、黄色の花を渡してくれた。その間もずっと拍手が鳴っている。思わず他のやつらと顔を見合わせたら、そいつの肩が震えてるのに気づいた。でも俺も人のことは言えねぇ。俺も、やっぱり。
・・・・・・もっとこのチームで、プレーしたかったよ。

雑誌は部室に置いていった。
せめて俺の代わりにいてくれたらいいと、そんなことを思いながら。





高縄中、新キャプテンはタッキーです。
2007年3月1日