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すごく大きな学校だったよ。
「笠井、悪いんだが校門まで人を迎えに行ってくれないか?」
午前の練習終了時、渋沢キャプテンに声をかけられた。
振り向くと、キャプテンの向こうには桐原監督がいる。あぁ、何か話でもあるのかな。
「いいですよ、分かりました」
「小柄な女の子だからすぐに分かると思う。すまないな」
キャプテンはそう言って小走りで監督の元へ駆けていく。俺もタオルとドリンクを受け取って、校門に向かった。
校門には、キャプテンの言う通り小柄な女の子が一人立っていた。白にグレーのラインが入ったセーラー服。どこの学校だろう。
彼女は俺に気がつくと、ぺこりと小さく会釈した。
「えっと・・・・・・渋沢キャプテンの代理で来ました、笠井です」
「東京都選抜でマネージャーをしてます、杉原です。練習でお疲れのところすみません」
「いや、気にしないで下さい」
何て言うか、小さいから幼く見えるのにしっかりしてるなぁ。選抜のマネージャーなんだ。だからかな、どこかで見たことあるような気がする。
「キャプテンはちょっと監督と話してるんで、少し待ってもらうかもしれません」
「わたしなら構いませんけど・・・笠井君も疲れてるでしょうし、一人でも大丈夫ですよ」
「あー・・・・・・でも、うちは男子校なんで」
女の子を一人にするのはちょっと。そう言うと、杉原さんはぱちっと目を瞬いてくすくすと笑った。
いやでもサッカー部のグラウンドに行くまででも、他の部活とかからチクチク視線感じてるし。これだから男子校は・・・。
「あ、間宮君」
杉原さんは強者だった。彼女が間宮に話し掛けたことで、サッカー部内に動揺が走る。
「あのね、選抜の予定表、渋沢さんに渡しておくから後でもらってね」
「あぁ」
「練習ご苦労様」
・・・・・・同じ選抜に所属しているとはいえ、ある種独特の空気を放っている間宮に普通に話し掛ける杉原さんはすごい。
そして・・・・・・あぁ、あっちで犬みたいに耳と尻尾を反応させた誠二も、そういや選抜のメンバーだったっけ。50メートル六秒フラットの俊足を無駄に生かして近づいてくるよ・・・。
「亜紀ちゃーんっ! 久しぶり!」
「こんにちは、藤代君」
「何? 何でうちにいんの!? しかも竹巳と一緒に!」
「選抜の練習予定表を届けに来たの。藤代君たちは全国大会で、この前の練習はいなかったでしょ?」
「俺はキャプテンに頼まれて、校門まで彼女を迎えに行ったんだよ」
「えーっ! それなら俺も行ったのに! 竹巳、何で誘ってくれなかったんだよっ!」
文句を募らせる誠二にも、杉原さんはにこにこと笑みを返してる。うーん・・・・・・大人だ。何て言うか、キャプテンとはまた違うんだけど、包容力みたいなのを感じる。というか、結構受け流すタイプなのかも。
まぁ、そんな感じて相変わらず周囲のちくちく視線を受けながら、俺たちはキャプテンが来るまでのんびり話をしていた。
・・・・・・それにしても杉原さん、やっぱりどこかで見たことある気がするんだよなぁ。
森の三年生は二学期まで中等部の練習、三学期は高等部の練習に混ざります。
2006年11月8日