一緒に、いてね。





「思うんだけど、ちょっと異常じゃない?」
普通の人なら言いにくいことを、設楽君はあっさりと指摘してきた。
うん、こういうストレートな人は嫌いじゃない。会話センスがあるんだと思うよ。嫌味も感じないし、喋るのが楽な相手だ。
「うん、僕とはちょっと異常だろうね」
自覚してるよ。他に双子の知り合いがいないから、程度は自己判断だけど。
「でもね、僕はが大好きだし、大事だから」
「それは兄として? それとも男として?」
「どっちだと思う?」
尋ね返すと、設楽君は首を捻った。あ、この杏仁シェイク美味しい。今度と一緒に来よう。
「今のところは兄として、って感じに見える」
「うん、そうだよ。今のところは双子の片割れとしてなんだと思う」
設楽君がトレーにポテトを広げて僕にも勧めてくれる。いい人だなぁ。甘いものも好きらしいし、意外に僕と好みが似てるのかもしれない。
だからこそに声をかけたんだろうしね。
「正直、僕もどこまでが肉親の情なのか分からないんだ。もしかして明日起きたら、を一人の女性として愛してるかもしれない」
「げ、それは勘弁。俺が完璧負けるじゃん」
「それが問題だよね」
うん、本当にそれが問題なんだよ。
「でも僕がもしも誰かを特別に愛するとしたら、それは以外にありえないと思うんだ」
「それ、逆はありえんの?」
は分からないよ。確かにの中で僕は永遠に特別だろうけど、それが恋愛になるか、それとも双子のままなのかは分からない。だからこそ僕は、今のうちにに彼氏候補が出来るのは良いことだと思ってるんだ」
そうすれば世界に男は僕だけじゃないって知ることが出来るでしょう?
そう言うと設楽君は、自分の指先についたポテトの塩をなめとった。単調な味にも飽きてきたし、バーベキューソースがほしいな。それかマスタードソース。
「彼氏、じゃなくて彼氏候補、なんだ?」
「まぁね。まだ全部は譲れないから」
「彼女がそれを望んだとしても?」
「うん・・・・・・そうだね、しばらくは渡せない」
僕がの幸せを純粋に祈れるようになるまで、握った手を放せるようになるまでは待ってもらう。僕からを奪ってくんだから、それくらいは当然だよ。
「でも結局、彼女の中でおまえはずっと特別なんだろうな」
設楽君がしみじみとまとめる。
「つまり彼女の中の不動の一位・杉原多紀を許容した上で付き合えるほどの器がなきゃダメなわけだ?」
「手っ取り早く言うと、まぁそうかな」
無理だと思ったならすぐに手を引いていいよ。は可愛いし優しいから、あいにくと候補はまだまだたくさんいるんだ。カザ君とか、椎名さんとか、それに話は別次元だけど郭とか・・・ね。
「いや、とりあえずは頑張るつもりだし」
「そう?」
「ん。久々マジになりそうだからさ」
なのでよろしく、と言った設楽君に、こちらこそ、って笑って返した。僕は僕との味方であって誰の応援もしないけど、とりあえずは君がを誘うことを認めてあげるよ。
とりあえず、が僕にとって『妹』である今の内はね。



杏仁シェイクを音を立てて飲み干す。うん、やっぱり美味しい。今度はと一緒に来よう。
設楽君が誘う前にね。





今すぐ選ぶことはないよ。僕も、も。想いさえあれば、僕らはずっと一緒にいられるんだから。
2006年8月17日