・・・・・・いってきます。





練習が終わる頃、私服姿の設楽が現れた。あいつって確か選抜には落ちたはずだよな? なのに何でこんなとこにいるんだ?
「設楽、てめー何の用だよ」
「別に鳴海に会いに来たわけじゃないし」
「あぁ? じゃあ何しに来やがった」
桜庭や上原とかと挨拶しながら、設楽はきょろきょろ誰かを探してる。それが一つのところで固定されて、俺もつられてそっちを見てみれば、杉原に促されてマネージャーが鞄を持ったまま校舎の方へ走っていってる。・・・・・・ってオイ、まさか。
思わず隣にいる英士を見ちまった。相変わらずクールな顔してるけど、合宿で言ってたのがマジなら、これはやばいんじゃねぇ?
「こんにちは、設楽君」
杉原は相変わらず得体の知れない顔で笑いながら、設楽に近づく。ここだけの話、こいつは実は英士と似てるんじゃないかって俺は思ってる。
「どうも。今日は映画でいい?」
は恋愛映画よりもアクション、アクションよりもファンタジーが好きだよ」
「・・・・・・二人にしてくれんの?」
「『僕も一緒でいい』って言った君に敬意を表して、今日だけはね」
うちの夕飯は七時までだから、それまでには返してもらえる? 
そう言った杉原に、設楽は「了解」って頷いた。
オイオイオイ、マジで!? どう考えたって今の、デートの誘いじゃん!
鳴海なんかあっけにとられてるし、桜庭とか上原は冷やかしてるよ。椎名は・・・何か機嫌悪げ? ってそんなことより!
「え、英士・・・・・・」
一馬が心配そうに英士を振り返る。俺も一緒に英士を見たけど、こいつ相変わらずクールな顔してるし。合宿のときに言ってた「気に入ってる」って言葉は嘘だったのか?
「何、二人して」
「何って・・・・・・いいのかよ、あれ」
「別にいいんじゃない? 付き合うとかって話じゃないみたいだし」
「でも・・・・・・」
デートの約束までしてるってことは、時間の問題じゃねぇ?
そんなことを一馬と視線で話し合ってると、英士が笑った。何だよ、その楽しげな顔。英士がこんな顔するときって禄なこと言わないんだよなー・・・。
「いいんだよ。俺が杉原に抜かされない限り、杉原さんは俺のことを見て見ぬ振り出来ないんだからね」
あー・・・・・・やっぱ禄なこと言わなかった。くすくす笑ってる英士に、思わず俺は一馬とアイコンタクトしてしまった。英士ってかなりしつこいし、可哀想だな、マネージャー。

校舎から出てきたマネージャーはワンピースに着替えてた。柄の目立たないシンプルなやつで、ウエストより高い位置でリボンを結ぶようになってる。足元はサンダル。
途中で西園寺監督に話し掛けられて立ち止まってる。グロスを塗られたらしくて、こっちに走ってきたときは唇がつやつやしてた。おろしたままの髪を撫でて、杉原が白い帽子を被せてやる。
あー・・・・・・俺なら髪、三つ編みにする。二つに分けて緩めの編み込み。絶対似合うって。今度やらせてくんないかな。
ちゃん、すごく似合ってるね。可愛いよ」
「ありがとう、カザ君」
あ、マネージャーってっていうんだ? そういやそういう名前だったっけ。
風祭がすげぇさらっと褒めて、マネージャーはそれに礼を言いながら杉原にドラムバッグを渡す。マネージャーの手に残ったのは小さなポシェット。
「じゃあ借りるね」
「うん、貸すよ。、楽しんでおいで」
「うん・・・・・・いってきます、多紀ちゃん」
何かちょっと不安そうな顔で、マネージャーは設楽と歩いて行った。校庭から出る間に何回も振り返ってたけど、杉原は手を振って見送ってる。
二人の姿が見えなくなった頃、英士が言った。

「今度、俺にも杉原さんを貸してくれる? どうしてもって言うなら、おまえも一緒でいいけど」
「絶対お断りだね。君に貸していい存在なんてこの世に一つもないよ」

やっぱり英士と杉原って似てるって。なぁ、一馬?





何気に結人と一馬は耐性があるので平気かと。
2006年6月16日