どうしよう。どうしよう。





選抜練習の初日。
多紀ちゃんと一緒に練習場所の飛葉中に行ってみたけど、西園寺コーチとマルココーチと中村コーチはいるのに尾花沢監督がいない。
まだ来てないのかな。でももう練習が始まる時間なのに。そう思って聞いてみたら、西園寺コーチはにこって笑った。
「あぁ、尾花沢監督は入院されたのよ」
・・・・・・入院させたの?



練習が始まって、わたしもカラーコーンやボールを出すお手伝いをして、それ以外では基本的に西園寺コーチ・・・じゃなくて監督の近くにいるようにしてる。
監督はみんなに指示を出しながらも、わたしにその指示の裏にある意味を教えてくれたり、ときどきわたしに意見を求めたりして、いっぱいいろんなことを教えてくれる。
すごい人だなって思う。でも、こんなにすごい人なのに、鳴海君は女の人ってだけで嫌がった。
「そういう子にはね、実力で納得してもらえばいいのよ」
わたしの考えてることが分かるのかな。西園寺監督は言う。でも、でもね、監督。
「・・・・・・わたし、サッカーできないです」
「そうね、だからこそちゃんには経歴が大事になってくるわ。どのチームの監督を務め、そのチームをどんなレベルにまで導いたか。トーナメントなら何回戦、リーグ戦なら何位、そういったことが重要になってくる」
「はい」
「その経歴によって選手も認めてくれるわ。大丈夫、意外に元プレイヤーじゃない方が感情に流されない、適確な判断を下せるものよ」
だから頑張って。そう言って西園寺監督はわたしの頭をなでてくれた。きれいで優しい手。
ねぇ、多紀ちゃん。お姉ちゃんがいたらこんな感じかもしれないね。



今日の練習は初日ってこともあって、午前中だけ。
だから13時に終わるんだけど、何だか終わってほしいような、終わってほしくないような気がする。
多紀ちゃんは行ってきていいって言ってくれたけど、たぶん設楽君も悪い人じゃないとは思うんだけど。
わたしって人見知りするタイプなのかな。それとも男の子と二人で出かけるのが多紀ちゃん以外で初めてだからかな。
時間が近づいてくるにつれて、どきどきしてくるよ。
あぁ、やっぱり断ればよかった。そんなことを考えているうちに、どんどんどんどん過ぎちゃって。
「あれ? 設楽?」
練習ぜんぶ、終わっちゃった。
どうしよう。ねぇ、多紀ちゃん。どうしよう。





嫌いなわけじゃ、たぶん、なくて。でも何だか不安で、どきどき、して。
2006年6月2日