・・・・・・どうしよう。





今日は暑かったから先にお風呂に入って、夕飯を食べた後にリビングでのんびりしてると、がぽてぽて近づいてきた。
いつもは隣に座るのに、今日は後ろに背中をくっつけるようにして座る。これは困ってるときの、の癖。
「・・・・・・多紀ちゃん、あのね」
「うん」
「明星中の、設楽兵助君って分かる?」
「選抜合宿でAにいた、こぼれ球を拾うのが上手いフォワードだよね?」
「うん」
「彼がどうかした?」
は今日、武蔵森と明星の決勝を見に行ってたから、そのときに何かあったのかな。そんなことを考えてたら、背中からぽつんと声がして。
「・・・・・・今度、一緒に映画見に行こうって、誘われちゃったよ」
どうしよう、多紀ちゃん。そう言ったに僕は思わず笑顔になる。だっては僕の自慢だから。
お目が高いね、設楽君。

に聞いた話を要約すると、こういうことになる。
「試合の後、設楽君に話し掛けられた」
「うん」
「設楽君は今度の日曜日、一緒に映画を見に行こうってを誘った」
「うん」
「でもその日は選抜の練習初日だから無理って言ったら、練習が終わる時間を聞かれて、13時って答えたら迎えに行くって言われた」
「うん」
「何で自分を誘うのかって聞いたら、設楽君は『もっと話がしてみたいから』って言った」
「うん、それでね」
クッションを抱きしめて、は上目遣いに僕を見る。

「設楽君、『二人きりが心配なら、お兄さんも一緒でぜんぜん構わないよ』・・・・・・って」

これって多紀ちゃんも一緒でいいってことだよね? だからデートとかじゃないよね? それに何で設楽君、わたしと話がしてみたいんだろう?
はものすごく不思議そうに首を傾げているけど、僕は笑いを堪えるので精一杯。
僕も一緒でいいって・・・! あはは、設楽君は本当にお目が高いね! のことをよく分かってる!
今までにもをデートに誘おうとした奴はいたけれど、僕も一緒でいいなんて言う人は初めてだよ。うん、面白い!
は設楽君のことどう思う?」
「フィジカルがあんまり強くなくて、ボールへの嗅覚がよい選手だと思う」
「そうじゃなくて、個人としてだよ」
聞くとは、またちょっと困ったようにクッションを抱き直して。
「・・・・・・変な人だなって思った」
「そっか」
「それと、多紀ちゃんにちょっと似てるかもって」
こてん、と頭を僕の肩に預けてくるは本当に可愛い。
そうだね、僕も一緒でいいという台詞に敬意を表して、一日くらいなら貸してもいいよ。



でもきちんと返してもらうから、それだけは忘れないでね。
僕はを手放す気、まだまだカケラもないんだから。





ゴー!
2006年5月24日