だいすき。





朝起きて、顔を洗って、服を着替えて準備をする。
西園寺コーチと一緒に部屋を出て、朝ご飯を食べに行く。今日はご飯がいいな。お魚に甘いたまご焼き。ホットケーキもいいな。クリームとジャム、たっぷり塗ったの。
「あら」
前を歩いてた西園寺コーチが楽しそうに声を上げる。その向こうにいるのは多紀ちゃん。ぺこりとコーチにおじぎした。
「じゃあまたね、杉原さん」
微笑みながら先を行くコーチは、何だかとてもご機嫌そう? 気のせいかな。
おはよう、多紀ちゃん。



お天気は晴れ、風はほとんどない。湿度もほどほど、気温もほどほど。いわゆるベストコンディション。
ちょっと外に出て、わたしと多紀ちゃんは遠回りしながら食堂に向かう。
すぐに手を繋いできた多紀ちゃん。どきどきしてるの、伝わってくるよ。
そのどきどきが、全部わたしに来ますように。わたしの応援が、全部多紀ちゃんに届きますように。多紀ちゃんが全力を出せますように。
お祈りしてたら、多紀ちゃんの空気がふって緩んだ。見上げれば多紀ちゃんは、いつもの笑顔に戻ってる。
「僕、頑張るよ」
多紀ちゃんはいつだって頑張ってきたよ。一番近くで見てきたわたしが保証するよ。
「残れるかは分からないけど、全力で頑張る」
多紀ちゃんなら残れるよ。これは双子としてではなく、マネージャーとして、コーチ補佐としての意見だよ。
「郭が気にならないって言ったら嘘だけど、気にしすぎても自分を崩すし、今回はBチームの勝利を優先する。それが合格にも繋がるだろうから」
試合をするからには勝ちを目指す。それは選手としての基本だね。
「だからは見守っていて」
多紀ちゃんが手を、ぎゅっと握る。

「どんな結果になろうとも、は僕を見守っていて」

手のひらから、眼差しから、繋がっている心から。
伝わってくるよ、多紀ちゃんの気持ち。伝えたいよ、わたしの気持ち。
ぎゅって手のひらに力を込めて、多紀ちゃんの目を見て頷いた。精いっぱい笑うよ。多紀ちゃんがそれを望んでくれるなら。わたしをまるごと多紀ちゃんに託すよ。
だから多紀ちゃん、負けないで。何にも何にも負けないで。
大好きだよ、わたしのたった一人のお兄ちゃん。
「・・・・・・ありがとう」
多紀ちゃんが笑った。
どうかその笑顔が試合後にも見られますように。





朝ご飯は二人ともお魚を食べました。玉子焼きは半分こ。
2006年5月15日