相変わらず嫌なやつ。





東京都選抜の選考合宿で、懐かしい顔を見つけた。



「こんにちは、杉原さん」
ミニゲームの間、バインダーを手に見学している彼女に近づいた。
140センチ半ばの位置から見上げられる。二年前より大きくなってるだろうけど、相変わらず小さくて細い。
「・・・・・・・・・郭君」
「久しぶりだね。元気だった?」
「あなたに話しかけられて最悪になった」
「相変わらずだね、その態度」
ふいっと顔を背けて、彼女はまたミニゲームに視線を戻す。プレイを見ては一つ一つ手元の紙に書き込んでいく。
杉原さんは、二年前まで俺の所属している川崎ロッサにいた。
正確に言えば所属していたのは彼女の双子の兄で、彼女自身は観客だった。
だけど試合だけじゃなくて毎回の練習も見に来る彼女は、俺たち選手の間ではいて当然のような存在だった。
彼女の片割れが俺と同じポジションってことで嫌われていたけれど、それが二年経っても変わってないとはね。
「Bの糸目。確か・・・・・・杉原多紀、だっけ?」
「・・・・・・覚えてたの?」
「君をね。兄の方は忘れてたよ」
「あなた、最悪」
眉が顰められて、言葉にも棘が増す。
観客席から練習を見ていた彼女はいつだって笑顔だったし、優しい雰囲気をしていたけれど、それが俺に向けられることはなかった。
杉原多紀と同じポジションだから。たったそれだけのことで。
「逆恨みでしょ、それ。まさかミッドフィルダー全員嫌うわけ?」
「多紀ちゃんがライバル視する人を嫌うの。だって多紀ちゃん、この間はあなたのせいで風邪引いちゃったもの」
「・・・・・・それこそ逆恨みなんだけど」
「知らない」
今度はぷいっと顔を背けられた。あぁ、そんな仕草も二年前から変わってないね。
目の前のミニゲームが終了し、次のゲームの参加者の名前が呼ばれる。
「それじゃ、杉原さん。俺のこと見ててね」
「たっぷりデータ取るから全力でどうぞ」
「どれだけ成長したか教えてあげるよ」
そして俺と杉原多紀がどれだけレベルが違うかってこともね。



「英士、マネージャーと何話してたんだよ?」
「めずらしいじゃん、自分から女に話しかけるなんて」
ピッチに入ると、同じチームに分けられた結人と、敵チームになった一馬が話しかけてくる。
「ちょっとね。彼女には俺のプレーをしっかり見ててほしいから」
「・・・・・・マジ?」
「大マジだよ」
少しだけ笑って、フィールド外にいる彼女を見た。
目が合った瞬間ににらみ返される。そういう気の強さが、気に入っている。

「何たって二年前から、ずっと目をつけていたんだからね」





奇妙な三角関係。
2006年5月8日