ウニなんだって。
午前中に見た技能テストでは、いっぱい情報を手に入れることができた。
プレイヤーの基本能力。オフェンス、ディフェンス、状況判断、応用力。
この合宿中は選抜のために使うけど、高縄中に帰ったら急いで分析して対策を立てよう。
だってわたしは、そのためにここへ来たんだもの。
コーチたちのお手伝いをして、お昼ご飯を食べにくるともう食堂はいっぱいになってた。
多紀ちゃんはもう誰かと食べてる。カザ君じゃなくて、髪に赤いメッシュを入れてる子。
行っても邪魔じゃないかな。一緒に食べてくれるかな。
「ねぇ、そこのマネジ」
考えてると、どこかの席から声をかけられた。見回してみると、少し離れたところに座っている子と目が合う。
知ってる、あの人。飛葉中のキャプテン、センターバックの椎名翼さん。
「席探してるんだろ? ここに来なよ」
「・・・・・・いいんですか?」
「良くなきゃ誘わない。それに話もあるしね」
多紀ちゃんの視線を感じてそっちを見ると、多紀ちゃんがわたしを見てる。
大丈夫だよ、多紀ちゃん。椎名翼さんは悪い人じゃなさそうだし、それにこの人はBの要になる人だから。
そう思って笑うと、多紀ちゃんも笑ってくれた。ちゃんと通じてるって分かる。
「じゃあ、お邪魔します」
近寄っていくと、ドレッドの子が席を詰めてくれた。長いから弟さんの方。畑六助君。
その向こうがお兄さんの畑五助さん。斜め向かいが黒川柾輝君。そして正面に、椎名翼さん。
「おまえ、それで足りるのか?」
「うん。いつもこれくらいだし。デザートがほしかったんだけど、全部なくなってたの」
黒川君がわたしのプレートを見て怪訝そうな顔してる。乗ってるのはご飯とお味噌汁とサラダとコロッケ一個。本当はお魚がよかったんだけど、時間が遅かったから残ってなかった。
「じゃあ俺のプリンやろうか?」
「いいの? 六助君」
「いいよ、ほら」
「ありがとう」
プリンをもらった。六助君、いい人。ありがとうって笑うと、少し照れたみたいで五助さんにからかわれてる。
いただきますって手を合わせるわたしを、椎名翼さんはじっと見てる。
「データは集まった?」
聞いてくる声は、小さく抑えられてる。ご飯を飲み込んで頷いた。
「今日の午後と明日の練習。それでフォーメーション組んで明日の夜に持ってきて」
「多紀ちゃんも一緒でいいですか?」
「いいよ。見たところBの中盤を担うのはあいつになりそうだしね」
空になったプレートを持って、椎名翼さんは立ち上がる。
この人は多紀ちゃんよりも小さいけど、骨格がしっかりしてるから筋肉がついてる。いいな、だからディフェンダーなのかな。
「あんたは俺たちBの戦術担当として呼ばれたんだ。玲の期待に応えるくらいの働きはしてもらうよ」
「はい、がんばります」
そう言うと、椎名翼さんはさっさと食器を返しに行ってしまった。
その途中で真田君と何か言い合ってる。あ・・・・・・中断した。
わたしのプレートにはまだ手をつけていないプリンがある。
「・・・・・・やるなよ?」
黒川柾輝君が、しょうゆのビンを遠ざけた。
わたしがこの選考合宿に呼ばれたのは、表向きはコーチたちの補佐のため。
でも実際は、基礎ばかりでフォーメーション練習をほとんど出来ないBチームのため。
最終日にあるA対Bの試合を少しでも対等なものにするために、呼ばれた。
西園寺さんはコーチングの指導もしてくれるって言ってたし、ちょうどいいかなって思って、お呼ばれしてみたんだけれど。
実際に来てみたら、都大会本戦に出てくる学校のエースたちばかりで、すごい得をしちゃった。
来てとっても正解だったよ、多紀ちゃん。今年の高縄中は目指せ東京代表ね。
タッキーがバリバリ本命で、後は趣味に偏る予定です。
2006年5月7日