選抜合宿にお呼ばれしたよ。





「多紀ちゃん、あのね」
選抜合宿にわたしもお呼ばれしちゃったよ。



高縄中は無事に地区予選トーナメントを勝ち抜いて、一位で都大会本戦出場を決めた。
よかった。本当によかった。準決勝では多紀ちゃんが風邪気味で、急いで戦略を練り直さなきゃいけなかったもの。
体調管理も選手の仕事だよ。練習を止めなかったわたしも悪かったけど。これからは気をつけようね。気をつけるね。
「うん、も選抜に呼ばれたね」
「多紀ちゃんも呼ばれたよね。おめでとう。すごくうれしい」
「ありがとう。が喜んでくれて僕も嬉しい」
「野望に向けての第一歩だね」
「それにしてもあのコーチ、何を考えているんだろう」
多紀ちゃんが首を傾げる。わたしも一緒に傾げる。
さっき顧問の先生に呼ばれて応接室に行ってみたら、すごく綺麗な女の人が待っていた。
前もって調べてあったから知ってる。飛葉中の監督、西園寺玲さん。フラットスリーを導入してて、適確なコーチングをしてる人。
正直あのディフェンスを破る決定的な攻めはまだ思いついていないから、出来れば本戦では当たりたくないな。負けないよ。ちゃんと戦略を立ててみせるけど。
に、コーチの補佐をして欲しいって言ってたね」
「タオル準備したりするマネージャーじゃなくてね」
「コーチングを直に学ぶいい機会だって言ってたね」
多紀ちゃんがわたしの手を握る。
「でも確かに、選抜にはいろんな学校の上手い選手が集まると思うの」
「偵察にはうってつけだね」
「本戦前なのに、いいのかな」
はコーチなのにね」
「デメリットはどこだろう」
が三日間部活に出れないことかなぁ」
「部活には顧問の先生もいるし、メリットの方が大きいね」
「うん、大きい」
「多紀ちゃん」
「うん」
「傍にいてもいい?」
わたしの手を包む多紀ちゃんの手は、いつのまにこんなに大きくなったんだろう。
指だってわたしと全然違う。それなのに多紀ちゃんはフィジカルが弱いの? じゃあ男女の差ってどれくらい深くて遠いの?
多紀ちゃん、わたしまだ、多紀ちゃんの傍にいられる?
「僕はずっとずっと、に傍にいてほしいよ」
「多紀ちゃん」
「この手は放さないからね?」
にこって多紀ちゃんが笑った。これは問答無用の笑顔。優しそうに見える多紀ちゃんの、ときどき見せる激しい執着。
その中にわたしが入ってることが、すごく嬉しい。
「多紀ちゃん、あのね」
「うん」
「大好きだよ」
いっぱいいっぱい伝わるように、多紀ちゃんの手をぎゅっと握った。
握り返してくれた手は、やっぱり強くて大きな男の子の、大好きな多紀ちゃんの手だった。





次回から多分合宿編。
2006年5月6日