ダビングしたよ。





「あれ? 杉原、今日はマネージャー休みなのか?」
部活に行くと先輩に話し掛けられた。
いつもは二人一緒に来てるから、一人の僕をきっと不思議に思ったんだろう。
先生と部長には言ってあるって、確か言ってたはずだけど。
は今日は、国部二中と桜上水中の練習試合を見に行ってますよ」
「あぁ、夏の大会へ向けての偵察か」
「地区が違うから予選では当たらないのに、さすがだな」
「二校とも、の注目校みたいですから」
「マネージャーの目は確かだし、そりゃしっかり見てきてもらわないと」
先輩たちは口々にそう言って、準備体操に入っていく。その際にも自分の分のタオルやドリンクは、自分でちゃんと用意していく。
はこの部のマネージャーだけど、それは一般的な意味じゃなくて、どちらかといえば『指示を出す人』に近い。
対戦校のデータを収集し、分析して、うちの学校の戦力でどう戦えばいいかを模索する。
やっていることはほとんど監督なのかもしれない。うちは顧問の先生はいるけれど監督はいないから、余計にそうなっているみたいだ。
は昔から僕の傍で、どんなオフェンスをすれば相手を抜けるのか、どんなディフェンスをすれば相手を止められるのか、いつもずっと考えてくれている。
僕は男で、は女で、一緒にサッカーは出来ないと知ってから、ずっと。
僕はフィールドの中で、はフィールドの外で、二人一緒にプレーしてきた。だからこそ今の僕がいる。
こんなことを言ったらきっとは嬉しくて泣いちゃうかもしれないけど、を国立のピッチに連れていくのが僕の夢。
絶対に連れていくと、心の中で決めている。でもまだ、言わない。
泣いたは可愛いけれど、やっぱり笑顔の方が好きだしね。

杉原。僕の双子の妹。
いつでも一緒だった。きっとこれからも、いつでも一緒。
大好きな、僕の妹。
でもきっと双子じゃなくても大好きだよ。だってがどんなに頑張ってるか知っているから。
大好きだよ、

部活を終えて家に帰れば、先に戻ってたのか玄関にの靴がある。
部屋を覗いてみれば、やっぱりテレビの前でじっと画面を見つめている。映っているのは間違いなく、今日見てきた練習試合。
青いユニフォームの10番が、綺麗なパスを繋いでみせた。これが、水野竜也。
「・・・・・・多紀ちゃんだって、負けないもの」
僕がいることに気づいていない、の独り言に思わず笑ってしまう。
ねぇ、それは双子の欲目が入ってない?

君がいてくれるなら、僕はもっともっと頑張れるよ。
だからこれからもずっと、二人で一緒に走っていこう。



「多紀ちゃん、あのね」
僕を呼ぶ声に、大好きを込めて微笑んだ。
ねぇ、僕は君と双子に生まれて幸せだよ。





二人で一人じゃないけれど、二人で二乗の関係です。
2006年5月5日