日曜の部活、お休みするね。
「多紀ちゃん、あのね」
廊下で見つけた後ろ姿に駆け寄った。
色素の薄い髪、わたしと一緒。背は多紀ちゃんの方が10センチくらい高い。双子なのに、男女の差かな。
振り向いた多紀ちゃんは、手を伸ばしてわたしの髪を直してくれる。
ありがとうって笑うと、どういたしましてって笑ってくれた。多紀ちゃんの笑顔、わたし大好き。
「多紀ちゃん、あのね、今度の日曜、わたし部活お休みするね」
「どうかしたの?」
「さっき先生に聞いたんだけど、今度の日曜日、国部二中と桜上水中が練習試合をするんだって」
横に並んで、校庭に向かって一緒に歩き出す。多紀ちゃんは昔からずっと、わたしに歩幅を合わせてくれる。
「国部二中には、天城燎一君がいるでしょう? 春の大会は天城君、退場しちゃったからあんまり見れなかったし。一度ちゃんと見ておきたいの」
「すごいシュートを打つんだっけ?」
「うん、ゴールが浮かぶんだって」
「それはすごいね」
「うん、すごいね」
でもちゃんと抑え込める戦術を考えるよ。それがわたしの仕事だもの。
そう言うと、多紀ちゃんはエライねって褒めてくれた。言葉じゃなくて、笑顔でそう言ってくれてる。
「でもね、桜上水も要注意だと思うの。春の大会は一回戦負けだったけど、武蔵森の一軍相手に3−2だったんだもの。特に、トップ下の水野竜也君」
他にも佐藤成樹君や風祭将君、何よりチームワークの良さとか、気になるところはいっぱいあるけれど。
「・・・・・・多紀ちゃんと、同じポジションだね」
見上げると、前を向いている多紀ちゃんの目が、さっきとは違った感じで細くなってる。
いつも優しい多紀ちゃんも、サッカーに関してだけはこういう鋭い目をすることがある。
それは、多紀ちゃんがそれだけサッカーに真剣だっていうこと。
だからわたしは応援するよ。多紀ちゃんはわたしの一番だもの。双子じゃなくても応援するよ。多紀ちゃんが今までどんなに頑張ってきたのか知ってるもの。
「・・・・・・ビデオ、撮ってきたら見せてね?」
「うん、多紀ちゃん用にダビングするね」
「負けたくないな」
「うん」
多紀ちゃんの手が伸びてきて、わたしの手を探して握る。
これは多紀ちゃんが不安になってるときの仕草。だから、わたしは手を握り返すよ。
ここにいるよ、多紀ちゃん。ずっと見てるよ。
わたしはどんなときも、何があっても、ずっと多紀ちゃんの味方だよ。
「大好きだよ、多紀ちゃん」
ぎゅっと強く手を握ると、前を向いていた多紀ちゃんが振り向いて笑う。
その顔は嬉しい顔でしょう? 知ってるよ。
「僕もが大好きだよ」
うん、それも知ってる。
多紀ちゃん、あのね。
わたし、多紀ちゃんの双子に生まれて幸せだよ。
兄はフィールド内、妹はフィールド外の司令塔。
2006年5月5日