じつはじつはじつはじつは。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ずーっとずっと憧れてたのはナイショのナイショ。
(今でも憧れてるんだけどね!)
青春学園中等部生徒会(3-6出会い編・菊丸)
やーっと部活も終わってこれから帰るぞ! ってとこなんだけど。
いつもはさっさと帰るんだけど、今日はちょっと残ってる。
だって、手塚に聞きたいことがあるからさ。
片付けの終わった一年やおチビ・桃・海堂・タカさんも帰って、部室にいるのは俺と不二と乾と大石と手塚。
うん、そろそろいっかにゃ。
「ねーねー手塚」
呼びかけると手塚が振り向いた。
にゃ。部誌を書いてるときも眉間にシワがよってるぞ。
「・・・・・・・・・さんと、手塚って知り合い?」
うぎゃ。みんなしてコッチ見ないでよー!
でも不二はニッコリと笑って手塚を見てる。
「僕も不思議だったんだ。今日のお昼、仲良さそうにお弁当食べてたじゃない?」
うんうんそうそう。やっぱ不二も気になってたんだー。しかも何気にその笑顔はにゃんか探りを入れるときの笑顔だし。
手塚は特に反応もなく部誌を再び書き始めて。
「は生徒会の副会長だ」
せいとかいのふくかいちょう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「えーッ! うっそホント!? 副会長ってさんだったの!?」
いや、だってこれはマジで驚き。
俺はよく知らないけど、今期の青学生徒会っていったら他校でも有名みたいだし。
手塚が会長だっていうのは知ってたけどさー、まさかさんが副会長だったにゃんて。
「・・・・・・手塚が指名したの?」
「そうだ」
不二の質問に手塚が頷く。
あ、そっか。たしか副会長とかは会長が勝手に決められるんだっけ。
ってことは手塚とさんはそれ以前に知り合いだったってこと?
「手塚とさんは一年と二年で同じクラスだったよな」
大石が手塚に問いかけると、手塚は無言で頷く。
・・・・・・・・・・・・・・・・・そりゃ知ってたけどさぁ。
去年とかさんを見たくて怒られるのも承知で手塚に教科書とか借りに行ったし。
だからって、だからって。
一緒にお昼食べるほど仲がいいなんて知らなかったぞぉ〜〜〜〜〜!!!
にゃんて羨ましいんだ手塚!
ズルイズルイズルイ!!!
「さんか・・・・・・」
乾がノートをパラリとめくった。
「1年のときは4組、2年では9組、現在は3年6組所属。部活は美術部。身長は163cmで体重は48kg。趣味は読書で好きなものは甘味物。とくにチョコレートが好きらしいね。去年の学術平均成績は学年で5位、マラソン大会では8位だった。あの通りの容姿だから男子生徒からの人気が高いけど、女子からの支持もそれに負けないくらい得ている。現在特定の恋人はいないが数人のボーイフレンドおよびガールフレンドはいるみたいだ」
・・・・・・・・・っていうか、どうして乾がさんの体重まで知ってんのさ・・・。
「本人に聞いたんだよ。一年のときは俺も同じクラスだったからね」
羨ましい奴がここにもいる――――――――――っ!!!
じゃあにゃに? この中でさんと手塚の仲を知らなかったのって俺と不二だけ!?
みんなズルイ・・・・・・・・・・・。にゃんか泣きそう・・・・・・。
マジで凹みそうなとき、コンコンってノックの音がした。
誰だ? テニス部員ならノックなんてしないだろうし。先生かにゃ?
大石が立ち上がってドアを開ける。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マジで、息が止まるかと思った。
乾が譲ったパイプ椅子に座って、手塚とさんが向き合っている。
部誌は大石にバトンタッチしたらしい。
うわ、うわうわうわ。にゃんかドキドキする。
そりゃさ、昼も二人が話してるのは近くで見てたけど、今はさっきさんの話をしてた分余計にドキドキする。
不二と並んでロッカーの前から拝見中。
「ハイ、出来たわよ。今年度の大会費の原案」
バサッと机の上に書類を乗せて。
「・・・・・・今までやってたのか?」
「そうよ。だって今日中に終わらせたかったんだもの。明日は明日で予定が入ってるしね」
見上げれば時計はもう七時近く。
うわ、三時間以上もそんなのやってたんだぁ。
スゴイっていうかご苦労様っていうか・・・・・・。
手塚が書類に目を通し始めると、さんは髪をサラリとかきあげて机に肘をついた。
・・・・・・・・・・そんな仕草もメチャクチャ綺麗だしー!!
目の前で見れるなんて感激っ!
「」
「何? 乾」
話しかけられたさんは顔を上げて乾を見た。
そしたら乾はニヤァって笑って。
「あそこにいるのが菊丸と不二だよ。俺たちと同じテニス部の」
さんが、コッチを向いた。
きれい。
きれいなひと。
真っ白な肌も、大きな目も、黒い髪も、ずべてがきれい。
赤い唇が弧を描いてゆるやかに笑う。
どうしよう。
こんなきれいなひとがいるなんて。
「知ってるわよ。二人とも同じクラスだもの」
「でも二人と話したことはないでしょ?」
「そういえばそうね。・・・・・・・・・こんにちは、菊丸君、不二君」
さんが笑った。
すごくすごく優しそうに。
俺に向かって、笑った。
自然と顔が熱くなって。
うわ、絶対いま真っ赤になってるって!!
さんは目をパチクリしてるし、乾と大石は笑いを堪えてるし。
だってしょーがないじゃん! さんが綺麗すぎるんだからさ!!
隣を見れば不二も真っ赤になってた。
うん、これが普通の反応だって!
さんはそんな俺たちを見てまた話し出す。
「二人のことは手塚からよく聞いてるわ。一年間同じクラスだしよろしくね」
「あ、あああああああああ、うん!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
声が裏返りまくったし・・・。
乾と大石なんかもう声上げて笑い出したよ。
もういいやッ! 開き直ってやる!
「俺、菊丸英二! よろしくさん!」
シュパッて手を差し出したら、ちょっと迷ったみたいだけど握り返してくれて。
少しだけヒンヤリとした手の平が気持ちいい。
・・・・・・あーもーサイコーに幸せ!!
「僕は不二周助。よろしく」
不二がニッコリと笑って手を差し出す。
にゃにゃ。不二め、真似したな〜。
でもいいや。さんと握手できたし!
「ね、さん。一つ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
不二が丁寧に切り出した。
しかも「答えたくなかったら答えなくていいからね」なんて台詞もつけて!
不二がこんなことを言うなんて!
いつもは気になったことは何が何でも聞き出すのに!!
おそるべしさん。
「さっき乾に聞いたんだけど・・・・・・恋人がいないって本当?」
あ。
さんはチラリと乾を見て。
「本当よ」
「でも、お昼のときに『明日はデートだ』って言ってたよね?」
ああ。
デートってことは相手がいるわけで。
デートってことは相手はそれなりに特別な人なわけで。
にゃにゃにゃにゃにゃ。
俺って速攻で失恋決定?
いや、まださんのことが好きなのかどうかは分かんないんだけど。
でもなんだかショックー・・・・・・・・・。
「dateの本来の意味は『約束して異性と会うこと』。つまり恋人じゃなくても構わないのよ。まあアメリカでは『愛し合う男女が』って枕詞がつくけどね」
「でも、恋人じゃない?」
「ええ。私に特定の恋人はいないの」
「不特定多数はいるんだ?」
不二がそう聞いたらさんは目を細めて微笑んだ。
艶やかに、ものすごく色っぽく。
少しだけイタズラめいた瞳がキラキラしてて。
うわ、ちょっと、マジで美人なんだ。
再確認しちゃうよ。
見れば聞いた不二だけじゃなくて乾も大石もそんなさんに見とれてるし。
本当に、すごく魅力的な人。
・・・・・・好きに、なっちゃうかもしれない。
さん口を開く。
「ボーイフレンドとガールフレンドならたくさんいるわね」
「・・・・・・じゃあ」
不二が一歩前に出た。
「僕も、そのうちの一人にしてくれないかな?」
そっと、男にしては繊細な不二の手が伸びて。
さんの右手を取るとすごく柔らかく笑った。
そしてゆっくりとその甲に口付ける。
まるで映画のワンシーンのように。
――――――――――――――――――――――って!!!!!
「ダメ―――――ッ!! 何言ってんだよ不二ッ!」
「何って英二」
さんの手を離さないまま不二が振り返って。
「僕はさんのボーイフレンドになりたいだけだよ」
「ダメダメダメダメ―――――!!」
思いっきり首を振る。
不二がさんのボーイフレンド!? そんなの絶対ダメッ!
不二は少し考えた後で楽しそうに笑った。
うぅ・・・。そんな風に笑うときはロクなことがないはず・・・・・・。
「そっか。英二もさんのボーイフレンドになりたいの?」
!!!!!!!!!!
ボッと顔が赤くなったのが自分でも分かった。
え、うわ、ちょっとまって!!
返事も出来なくてわたわたと手を振るだけ。
ボーイフレンドって、さんのボーイフレンドって・・・・・・!
なりたいに決まってるじゃんか―――――っ!!!
「」
「何? 手塚」
俺が苦悩してると今までずっと書類を読んでいた手塚が顔を上げた。
「十分すぎる出来だ。・・・・・・礼を言う」
「謝礼はお菓子で返してね。モロゾフのプリンとエルソールのフルーツタルト。来週だったらいつ持ってきてくれてもいいわよ」
「判った」
・・・・・・・・・なんか普通に会話してるしー・・・。
さんの右手はまだ不二に握られたままなのに。
にゃんか眼中にないってかんじにゃ。
「不二」
手塚が不二の方に向き直ると、不二も我に返ったように「何?」と首をひねる。
「のボーイフレンドになるのは構わないが、苦労するだけだぞ」
「・・・・・・俺もそう思うよ、不二」
大石まで苦笑しながら止めに入るし。何か理由でもあるのかにゃ?
当のさん本人は黙って微笑んでるだけだし。(でもそんな姿もすごく綺麗!)
「のボーイフレンドになっても常に一緒にいられるわけじゃないし、他にもそういう人はたくさんいるからね」
乾がノートに書き込みしながら言う。
「女の子も男も本当にさんのファンは多いし」
うにゃにゃにゃにゃ。大石が重ねて止めるとは。
手塚はため息までついてるし。
「自分の前で他の男や女の話も平気でされるぞ。・・・・・・独占したいのなら諦めろ」
そこまで言われると不二も俺もさんに視線を移すしかなくて。
そしたらさんはそれはそれは楽しそうに笑って言った。
「私、広く浅く博愛主義者なの」
結局その後でさんは職員室によってから帰るといって別れたんだけど。
お近づきになれたような、なれなかったような微妙な感じ。
「さん、送っていかなくて大丈夫かな・・・?」
大石が心配そうに校舎のほうを見て言うけど、手塚はさっさと歩き出す。
「心配ないだろう。おそらく迎えが来ているからな」
まっすぐ視線の先には校門の前に立っている学生服の男。たぶん、俺よりちょっと年上くらい。
茶色の髪が柔らかそうで、体格のバランスもいいし、整った顔はカッコイイ。
そいつは俺たちを見止めると少しだけ笑みを浮かべて。
「なぁ、ってまだ中にいた?」
うわ、声までカッコイイ。
「お知り合いですか?」
「まぁな。あぁ、ひょっとしてアンタが手塚? 話には聞いてるぜ」
楽しそうに笑うと雰囲気が穏やかに揺らめいて。
にゃにゃにゃ。手塚と並んでも引けをとらないなんて男としてスゴイぞー。
「でしたらもうすぐ出てくると思いますよ」
「そっか。サンキュ」
軽やかに手を振ってその場を後にする。
チラチラと振り向いてるとさんが出てきて、二人して会話をしながら反対方向へ歩いていくのが見えた。
あれがボーイフレンドの一人にゃのかにゃ・・・・・・・・・。
「判っただろう。を独占したいのなら止めておけ。返って嫌われるだけだぞ」
手塚の忠告が心に沁みる・・・・・・・・・。
でもでもでも仲良くなりたいしー・・・・・・。
どうすれば・・・・・・・・・って!!
「そうだッ! 手塚みたいに接してもらえばいいんじゃん!!」
ぎゅっと拳を握って、我ながら名案!
「俺も手塚みたいにさんに癒されたいっ! そんでもって普通にケーキ食べに行ったりしたい!!」
「僕もさんに甘えさせてほしいな」
「そうだよ、それなら普通の友達でオッケーだし! よっし、明日さんにお願いしてみよーっと!!」
「あ、英二。僕も一緒に行くよ」
俺と不二が楽しそうに話してるとやっぱり手塚はため息をついてた。
大石と乾は苦笑してて。
「恋人にはなれないと思うがな・・・・・・・・・」
とりあえず手塚の声は置いといて!
だってまださんの恋人になりたいかどうか判んないし。
好きになっちゃう予感はしなくもないけどね。
でもとりあえずはお友達から始めましょ!
翌日「友達になって下さい!」って不二と二人で言ったらさんはずいぶん驚いてたみたいで。
でも次の瞬間柔らかく笑ってくれた。
うん、この本当の『笑顔』が見られるなら友達でもボーイフレンドでもなんでもいいや!
一年の最初の頃から綺麗な子だなーってずっと憧れてた。
にゃんだかすごく大切な気持ちで誰にも言ったことなかったんだけど。
今度さんに言ってみようかにゃ?
そしたらきっと俺の大好きな『笑顔』で笑ってくれると思うんだよね。
よっし今日の放課後にでもデートに誘ってみよーっと!
さんの隣は居心地がよくて。
ずっと傍にいてほしくなる。
そう思うのが俺だけじゃないってのが問題なんだけど!
でもいいや、しばらくはこのままで。
いつまでも、俺の憧れの人で居てください。
2002年9月8日