02.誕生日プレゼントU
目の前に座る少年は、その所作がとても整っている。ボンゴレの教育係に任せてきたけれど、やはり大本の素質によるところが大きいのだろう。一挙一動が彼女を思い出させる。あの子も言葉はどうあれ、振る舞いは完全な淑女だった。
「来週は君の誕生日だね、エドワード。七歳おめでとう」
そういって笑いかければ、少年は照れたように小首を傾げる。
「ありがとう、綱吉さん。これも僕を育ててくれた綱吉さんのおかげです」
「いい子に育ってくれて嬉しいよ。環境が環境だからね。情操教育には良くなかったとは思うんだけど」
「そんなことないです。綱吉さんも骸さんも、山本さんもみんな優しいし」
チョコレートケーキを咀嚼しながら、少年は話す。紅茶にほんの少しだけミルクを加えるのは、かつての童女と同じ仕草だ。
「この前なんか、マーモンさんが僕に本を読んでくれたんです。少し難しかったけど、すごく面白かった」
「へぇ、マーモンが?」
「はい。マーモンさんは結構お話してくれるんです。ときどき護身術なんかも教えてくれます」
嬉しそうに話す少年の裏、部下の真意を綱吉は知っている。沈黙を是とする彼が抱いていた、彼女への愛と情動。その想いがまだ薄れていないことに、彼の純粋な思慕を知る。
「獄寺さんやリボーンさんはあんまり話してくれないけれど、でも十分僕は幸せです」
「獄寺君やリボーンも、君を嫌ってるわけじゃないんだよ」
「何となく分かります。二人とも僕を見ると、すごく複雑そうな目をするから。特にリボーンさんは、悲しそうな顔もするし」
遅すぎ、そして深かった愛憎は、未だ彼の中に影を落としている。少年を見る度に思い出してしまうのだろう。時折遠くを見つめているリボーンを、綱吉は知っている。彼女は本当に、多くのものを遺して逝ってしまった。
気を取り直すように椅子に背を預け、綱吉は少年に笑いかける。
「エドワード、今年の誕生日プレゼントは何がほしい? 確か去年は生物図鑑のシリーズだったよね」
「はい。今もちゃんと大切にとってあります」
「今年はどうする? ものじゃなくてもいいよ。やってみたいこととかあれば、それでも」
「綱吉さん」
提案する綱吉に少年は笑い返した。つられるように笑おうとした瞬間。
――――――背筋が凍った。
「僕今年、母様と同じ年になるんです」
そう言って笑った少年の顔が、記憶の中の童女とまったくもって重なったのだ。
再会を喜ぶ暇など、ない。
さぁ行かなくちゃ。僕はこの日のために生まれてきたよ。
2006年8月13日