03.心のかたち
握り締めている手のひらの中、おしゃぶりが光を放つ。その色を認め、リボーンは強く唇を噛んだ。
「・・・・・・この子を、育てればいいんですね?」
綱吉の問いかけに、女はハイヒールを鳴らして頷く。
「そうよ、りっぱなボスにそだててちょうだい。のこだもの、そしつはじゅうぶんあるはずよ」
「分かりました。10代目ドン・ボンゴレの名において、この子は俺が面倒見ます」
「そうね、よろしく、ドン・ボンゴレ」
「他にはいいんですか? 貴女は今から戦場に戻るのでしょう? せめて手当てだけでも」
「いらないわ。これはラガツァとヴェレーノの抗争だもの」
女は髪をかき上げる。赤銅色のそれは血に固まっており、不恰好にぼろぼろと崩れた。傷をいくつも負っているのに、ぴんと伸ばされて屈しない背筋。一挙一動のすべてに女の、プライドと魂が込められている。
「ドン・ヴェレーノ、いやなおとこ、だけどあれがのしゅくめいなのよ。あいつをころすために、はマフィアにうまれたのよ。だからころすの。ころしあうために、たちはであったのよ」
「だけどヴェレーノは同盟ファミリーも参戦させているでしょう? だったら」
「いらないわ。ドン・ボンゴレ、おまえはふりかかるひのこだけをはらってなさい。だけどざんざすはころすわよ。ヴェレーノにじょうほうをながした、うらぎりもの。あれはのてでよみへおくらなきゃ。そのしんぞうをえぐりだして、こんどこそじごくへおくってやるわ」
その言葉には綱吉も反論しなかった。ドン・ラガツァへの暴行を原因に門外顧問から外され、一幹部としてボンゴレに属していたXANXUSも、約半年前から姿を消している。その理由も、今いる場所も、何となく分かっていた。彼の屈辱と復讐は、きっと12年前から始まっていたのだ。
「それじゃあ、はもどるわ。さようなら、ドン・ボンゴレ」
「・・・・・・さようなら、」
ドン・ラガツァ。そう告げようとした綱吉を遮ったのは、今にも崩れそうな張り詰めた声だった。
「―――コロネロなら、死んだぞ」
リボーンの言葉に、女が振り返る。見開かれた濃碧の目は、すでに片方失われていた。
最期に何を叫んで、あいつは逝った。
2006年8月12日