02.灼熱の女王
真っ赤な車だった。炎のような色だった。運転席から降りてきた女は、赤銅色の髪をしていた。灼熱のような色だった。額から、肩から、黒のドレスの太股から、紅い血が溢れていた。朝焼けのような色だった。
長い髪は喧騒に乱れ、完璧なメイクは色落ちしている。白皙の肌も今は血と傷に汚れ、それでも立っている姿は息を呑むほどに美しかった。戦うために産まれて来た女なのだと、誰もがそう認めるくらいに美しかった。
「ひさしぶりね、ドン・ボンゴレ」
舌足らずな喋りは、結局直ることがなかった。外見はすでに立派な成人女性を思わせるのに、中身だけは生涯変わることがなかった。車が激突したことで壊れ果てたドアの向こう、揃っている同盟ファミリーに向けて女は品よく笑みを浮かべる。
「ひさしぶりね、アルコバレーノ、むくろにボンゴレ、かんぶのみなさん。ゆっくりあいさつしたいけれど、いまはじかんがとってもないの。てみじかにはなしてしつれいするわ」
「・・・・・・借りを返せばいいんですね?」
「ええ、そうよ。わかってるならはなしがはやいわ」
女は唇を吊り上げて笑う。妖艶な笑みを血が彩り、まるで戦女神のようだった。破かれたスカートから、ガーターベルトと拳銃が覗く。彼女は決して銃など持たない人だったのに。
「ドン・ボンゴレ」
女は血に塗れた、けれど美しい指先で、車から掴みだしたものを綱吉へと放った。思わず抱きとめたそれは温かく、確かな鼓動を刻んでいる。包んでいる大きすぎるコートは、やはり血に染まっていたけれど。
「のむすこ、エドワードよ。じゅうさんだいめドン・ラガツァ。せきにんもって、りっぱなボスにそだててちょうだい」
ざわりと揺れた周囲を他所に、綱吉の腕の中で小さな塊が身動きした。齢二歳程度と思われる子供は、灼熱のような赤銅色の髪をしており、開かれた目は、澄んだ青色をしていた。
息子の名はエドガー温和王の息子、エドワード殉教王より。
2006年8月11日