04.太陽の反論
13歳の誕生日を迎える頃には、童女の身体は徐々に丸みを帯びてきていた。主張し始めた胸の膨らみや、柔らかな足の曲線は女への準備を始め、ようやく童女の放つ色艶にも追いつき始める。けれど相変わらず言葉は舌足らずで、童女を童女のまま象っていた。
「ヴィットーレ、ぶらじゃーがすこしきつくなったの。ひとつおおきなさいずにかえてちょうだい」
「畏まりました、ドン・ラガツァ」
朝食の席で交わされた言葉に、コロネロは危うくエスプレッソを噴出しかけた。顔を真っ赤にさせてむせ返る彼に、童女は悪戯な笑みを浮かべてからかいを投げる。
「どうしたの、コロネロ、さとうでもいれわすれたの?」
「っ・・・・・・テ、メー・・・! そういう話はメイドとしろって言ってんだろーが!」
「あら、だってヴィットーレはのせわやくよ。このこにつげるのはとうぜんでしょう?」
「ふざけんじゃねーぞコラ! テメーも女だったらもうちょっと慎みを持ちやがれ!」
「コロネロ、おまえももうはたちなんだから、もっとおんなになれたほうがいいんじゃなくて? こんなことでせきめんしてたら、あいじんにわらわれてしまうわよ」
くすりと笑うけれども、童女は知っている。コロネロに特定の愛人はいないのだ。気が向けば女を抱いているようだが、それも一夜限りの付き合いだとヴィットーレから聞いている。その理由も知っているから、童女は笑いかけるのだ。
「コロネロ、おまえ、ほんとうにかわいいわね」
馬鹿にされているのか、本心からそう評されているのか、おそらく確率は五分五分だろう。吐き出しそうになる溜息を堪えて、コロネロはカップを握り込む。どうやったって自分は童女に勝てないし、本当の意味で勝つ気もないのだ。童女がそれを分かっているからこそ性質の悪い悪戯は続く。
「それとヴィットーレ、なぷきんもかっておいてね。にほんせいがいいわ、はねつきのうすいやつ」
「畏まりました、ドン・ラガツァ」
「だからテメーらなぁ・・・・・・っ!」
だんっと思い切りテーブルを叩けば、今度こそ童女は声を上げて笑い出した。コロネロの向かいの席では、ヴィットーレもくすくすと笑みを漏らしている。からかわれているのを分かっていても、コロネロの顔は赤くなるばかりだ。
目の当たりにする童女の成長に、堪えきれなくなりそうな自分を、コロネロは必死で抑える。
その理由に、彼はとうに気づいてた。
おまえに捧ぐ敬意は変わらない。だけど抱きたい。抱かれたい。
2006年8月9日