02.光の真相
「おひさしぶりね、ドン・キャバッローネ」
「久しぶりだな、ドン・ラガツァ」
「げんきそうでなによりよ。こどもがうまれたってドン・ボンゴレからきいたわ。おめでとう、ドン・キャバッローネ、じゅういちだいめにしゅくふくを」
ドン・ラガツァは10歳の誕生日を迎えた以降、時折夜会にも顔を出すようになった。しかしそれはボンゴレの主催するもののみで、他は挨拶状を送るだけ。こうして顔を合わせるのはいつ振りになるのか、きっと童女は覚えていないだろう。覚えているのはディーノだけだ。
「あいじんはきょうはいないのね。うわさのじだい、みたかったのに」
「連れて来ないからな、こういう場には」
「あら、がいるからつれてこないのまちがいじゃなくて? おまえ、あいかわらずがきらいね。はじめてあったころからかわらない」
「悪いが、俺はキャバッローネのドンだからな。不安定要素には関わらないことにしてるんだ」
「そう、そうね、それがいいわ。だけどそううまくいかないのがじんせいなのよ」
一歩踏み出す童女は完全な淑女だ。まだ小さな手が血に塗れていようと、一見しただけでは分からない。仕草は上品で、容姿は年々美しくなる。まるで女神になっていく天使のようだと囁く輩さえ少なくないのだ。
「おまえのこども、むすこだそうね」
童女の濃碧の目がディーノを見上げる。その距離は昔より縮まっている。ディーノの身長はもう伸びないが、童女は今まさに成長期を迎えているのだ。
「とはじゅっさいさだわ」
「・・・・・・年が離れすぎてる」
「かんけいあるとおもうの? ひとはにひかれるわ。いいいみでも、わるいいみでも」
「俺はおまえに惹かれない」
「うそ。がにがしてあげただけ」
ふっくらとした唇が動く。そのあまりの鮮紅にディーノは今更ながらに気づいた。愕然とする。かつて感じた本能を、再度自覚してしまう。やばいと思う。
「きをつけなさい、ドン・キャバッローネ。はおまえがけっこうすきなのよ。だきしめるのはかんたんだけど、ていこうされるのもだいすきなのよ」
どこからかワルツの曲が流れ出し、ホールの中央へいくばくかの人が流れ出る。うやうやしく差し出された手を断る術はなく、ディーノは舌打ちして腕を差し出した。
「そういえば、おまえとはなんさいさだったかしら?」
楽しそうな声に答えは返さない。その正確な値を知っているのは、やはりディーノだけだった。
おまえは間違いなく知っている。俺が知っているということを。
2006年8月4日