05.そして、永遠
「ヴィットーレ」
呼ぶ声は幼い。六歳だった頃よりも、舌足らずになってしまった。
「あれ、じゃまだわ。つぶしてちょうだい」
紡ぐ言葉は命令。お願いではなく、命令になってしまった。
「そうね、そう、おもしろそうだわ。いいわ、それにきめるわね」
笑う顔は無邪気。天使だけれども、悪魔の顔も持ってしまった。
「ヴィットーレ、なにしてるの、はやく、はやく」
殺しを楽しむ。かつては見せないようにしていたのに、今では彼女自ら足を運ぶ。
「ヴィットーレ」
振り向く髪は母を継いで赤銅色。見上げる瞳は父を継いで濃碧色。
「ヴィットーレ」
「はい、お嬢様」
「ちがうわ、ドン・ラガツァよ」
彼女は変わってしまった。目の前での母の裏切り、父の絶命。それらが彼女を変えてしまった。小さな手は頼ることを止め、高い声は甘さを無くした。代わりに得たのは、深い深い底のない闇。そこから童女は彼を呼ぶ。
「ヴィットーレ」
「はい、ドン・ラガツァ」
堕ちることに何をためらう必要があるのだろうか。
がどんなに変わろうとも、ヴィットーレの気持ちは揺るがない。闇に抱かれ、彼は今日も誓い続ける。
唯一の存在に、永遠の愛と忠誠を。
ヴィットーレ編終了。
2006年8月4日