03.いとおしさに溢れる
高い高い声が自分を呼ぶ。発音はまだおぼつかない。
「ヴィ」
「はい、お嬢様」
「ヴィ、ヴィ」
伸ばされる腕に愛しさを覚えて、そっと壊れ物を扱うかのように抱き上げる。高い視界に赤子が笑う。庭園を歩く二人を眺め、ドン・ラガツァは微笑んでいた。
「ヴィットーレ、おまえはもう完全にの虜だな」
「はい、ドン・ラガツァ。僕はお嬢様に会うためにこの世に産まれてきたのです」
「兄のつもりだったのが、一体どこでこうなったのやら・・・。まぁいい、優秀なボディーガードが出来ても嬉しいだろう。出来る限りその子を守ってやってくれ」
「はい、ドン・ラガツァ。僕の命に代えましても」
微笑みながら宣誓を述べる。優しい顔は赤子にだけ注がれている。
「ヴィ」
まっすぐに笑いかけてくれる赤子の手に、ヴィットーレはそっと唇を落とした。
この日々が永遠に続けば良いのに。
2006年8月4日