02.あなたのために僕は





11代目ドン・ラガツァは気さくな男だった。肩幅があり、上背も高く、一見してスポーツマンのように見えた。彼は自分を拾い、傍に置いた。その理由を何度も問うたのを覚えている。その度に彼は言ったのだ。「おまえは私の家族になりなさい」と。その言葉は生温い熱を自分に与えてくれた。それ以降、夜毎に内臓を抱くのは止めた。

ある日ドン・ラガツァは言った。「ヴィットーレ、おまえに弟妹が出来るぞ!」と。
両手を広げ、自分を抱きしめ、痛いくらい何度も背中を叩いてくる彼は、妻の懐妊をそれはそれは喜んでいた。ドン・ラガツァの妻は名をサラといい、赤銅の髪が美しい女性だった。ドン・ラガツァは彼女を愛し、彼女もドン・ラガツァを愛していた。仲睦まじい夫婦だった。
日増しに大きくなっていく腹に、ドン・ラガツァとその妻は触れさせてくれた。手のひらの下で脈打つ鼓動は、確かに命の熱を伝えてきた。その瞬間、体中の血が沸騰するかのように熱くなったのを、ヴィットーレは今も忘れない。
「男がいいな。いやでも女も捨てがたい。早く顔が見たいものだよ」
待ちきれないという感じでドン・ラガツァは毎日そう語ったが、ヴィットーレには分かっていた。産まれて来るのは女だ。



その子を愛するために、自分はこの世に産まれてきたのだ。





この運命は誰にも譲らない。僕だけのものだ。
2006年8月4日