01.純然たる愛と殺意
初めて殺したのは、自分を産んだ女だった。
女は娼婦だった。夜の街角に立ち、男を餌とする生き物だった。
自分を産みたくて産んだわけじゃないと、何度も言われた。惚れた客を繋ぎとめるための手段だったのだと、何度も聞いた。女は酒癖が悪かったから、ワインを開ける度に罵られて育った。
女の同業者からは、女にそっくりだと何度も言われた。
女を殺したのは、十になったかならないかという頃だった。
切欠は覚えていない。ただ凶器は覚えている。一瞬前まで女に命じられてリンゴを剥いていた、刃こぼれしている果物ナイフだ。
腹を裂いたのは帰りたかったからかもしれない。女が絶命した血の海で、取り出した子宮が温かくなかったことに失望を覚えた。
あの頃は幼かった。今なら分かる。あれは子宮ではなく肝臓だった。馬鹿な自分に笑ってしまう。
温かく包んでくれるものを探して、毎夜街をさまよった。女の腕では無理だった。男も試してみたが、やはり欲しいものは得られなかった。そのうち人間の中が最も温かいことを知った。それからは切り裂いた人間の上で、その臓器を抱きしめ、夜を過ごした。
11代目ドン・ラガツァと出会ったのは、最初の殺人から十年が経った頃だった。
血の海で僕は笑った。そして泣いた。
2006年8月4日