03.ドン・ボンゴレの憂鬱
「・・・っ・・・まさか、コロネロが・・・・・・!?」
愕然とした綱吉を見れた骸は満足そうに笑い、ワインの注がれたグラスを手に取る。窓からの日差しに透かして薄い赤を確認し、ぺろりとグラスの淵を舌でなぞった。その間も綱吉は信じられないように目を見開き、だんだんと顔色を青ざめさせていく。蒼白になる前に唇を噛み、こわばった声で質問を重ねる。
「・・・・・・それは、本当にコロネロだったのか?」
「ええ、金髪に碧眼の年若き少年。迷彩服に額のバンダナ、加えて青のおしゃぶりとくれば、まず間違いないでしょう。それに何より、ラガツァはマフィアランドに行ってたのですから」
「無理やり連れてこられた可能性は? 拘束とかはされていたのか?」
「いえ、まったく。そうですね、あえて言うなら手を繋いでいたくらいですよ。アルコバレーノがドン・ラガツァの手を握りしめていました」
骸の言葉に綱吉はわずかに沈黙し、深い息を吐き出した。少し骨っぽい両手で顔を覆い、かすれた声で問いかける。
「・・・・・・コロネロが、ドン・ラガツァに蹂躙されて、崩壊したという可能性は?」
「無きにしも有らずですが、あのアルコバレーノは自らドン・ラガツァに従ってましたよ。試しに軽く殺気を見せてみたところ、彼は自分の背にドン・ラガツァを隠し、ライフルを僕の眉間に放ちましたから」
続いたその言葉は、大きな意味を持って綱吉の中に響いた。つまりそれは、コロネロが自らの意志でドン・ラガツァに下ったということ。今までどこにも与しなかった最強の傭兵が、ドン・ラガツァのものになった。あの強大な武力が、さらに威を増す。そしてコロネロはアルコバレーノだ。マフィアに七つしかない虹のひとつを、ラガツァは手に入れてしまった。しかも今、よりにもよって―――12代目、・の時代に。
「・・・・・・・・・もーやだー・・・」
「同盟、組んで正解でしたねぇ。まさかアルコバレーノまで手に入れるとは、さすがドン・ラガツァ。ますます興味深くなってきましたよ」
「リボーンに何て言えばいいんだよ・・・・・・」
「そのまま言えばいいでしょう? 『リボーンが俺の傍を選んだように、コロネロはドン・ラガツァを選んだんだよ』、と」
「・・・・・・それが言えたら苦労しないって」
力なく両腕を落として、綱吉は机につっぷした。ぎゃーと叫びながら日本人にしては色素の薄い髪を乱暴にかきむしり、そして再びぱたりと倒れる。次に起き上がった時は完全に目が座っており、彼は一気にグラスのワインをあおった。
「おや、いい飲みっぷり」
「飲まなきゃやってらんないよ。あーもーちくしょうっ! ほんっとラガツァと同盟組んどいて良かった!」
「戦闘力は最強、ワインも美味しい、ドンは可愛い」
「ファミリーは基本マゾ、拠点は小さいけど完全支配、でもってドンはあの中身!」
「クフフ、もういっそ諦めて彼女と結婚したらどうですか?」
「勘弁してくれよ! リボーンとドン・ラガツァに挟まれて、俺に胃潰瘍で死ねって言うのか!?」
「ドン・ラガツァはまだ七歳ですから、時間はたっぷりありますよ」
「ほんと勘弁して下さい・・・・・・」
うんざりとした顔の綱吉に、骸はどんどんワインを注いでいく。お土産のそれを空にして次の焼酎に走る頃には、すでに綱吉による盛大な愚痴大会に突入していた。
「頼むから、骸はドン・ラガツァと組まないでくれよ・・・・・・!」
心底本気で望むボスに、骸はクフフと笑って明確な答えを避ける。
けれど何だかんだ言って彼は、今の居場所を結構気に入っているのだ。
そのうちドン・ラガツァと「契約」してみましょうかねぇ、なんて考えるくらいには。
なぁ、それはボンゴレのためだよな? なぁ、そうだよな? そうだと言ってくれよ、骸・・・!
2006年7月30日